安倍新政権は多極化の波を乗り越えられるか(4) 〜多極化構造へと向かう流れの中で〜
アメリカのイラク占領・治安回復が短期間で実現され、ネオコンの狙い通りアメリカの単独覇権主義による世界の安定化が実現されていれば、イギリス・イスラエル・日本といった親米諸国にとっては幸せな世界になっていたかもしれません。
しかし、残念ながら事態はそうはなりませんでした。
イラクでの戦後処理は泥沼化の一途をたどり、アメリカの覇権は失墜し、世界中で反米・非米感情は高まる一方です。
最近では、このままアメリカの覇権失墜が続けば、その後アメリカは孤立主義に陥るかもしれないという指摘さえ出るようになり、アメリカ中心に動いてきた世界が今大きくその構造を変化させようとしている雰囲気が感じられます。
そこで今回は、アメリカの単独覇権主義が惨敗した後に訪れるであろう世界の「多極化構造」への流れについて考えて行きたいと思います。
ここで言う多極化とは、「世界全体の経済成長率を上げるため、経済成長の潜在性がある先進国以外の国々にも、国際政治上の権限を分散し、途上国の成長を喚起すべきだ」(田中宇「国際ニュース解説」)という考え方のことです。
すなわち、中央集権的な政治構造から地方分権的な政治構造への転換を意味しています。
多極化へ向けての代表的な組織としては、EU(欧州連合)やASEAN(東南アジア諸国連合)などが挙げられます。
特にEUは通貨統合を経て、政治的にも経済的にも既にひとつの大きな極を作り出していると言えるでしょう。
今後、世界がアメリカの単独覇権主義から多極化構造へと移り変わるクリティカルな契機となるのは、おそらくイスラエルのイスラム諸国に対する敗北であろうと予想されます。
イスラエルは先日のヒズボラとの戦闘の結果、イスラム諸国における反米・反イスラエル感情を強烈に再燃させることとなりました。
しかしそれに対して後ろ盾となってくれるべきアメリカは、イラク統治に手間取りイスラエルを支援することが叶わない状況に陥っています。
もしこのままアメリカが中東での軍事力・発言力を弱め、イスラエルを「見捨てる」ことになってしまえば、中東でのパワーバランスは一気に崩れることでしょう。
そしてそれは、イラン・シリア・レバノンを中心としたイスラム連合によってイスラエルの覇権が崩壊させられ、イスラム諸国による政治的・経済的な極が中東に生まれることを意味しています。
この余波はイギリスにも日本にもいずれやってきます。
イギリスは親米路線を引きずってしまったため、EU内での発言力は既に弱まっており、欧州においてはドイツ・フランスを中心としたEUとそこに歩み寄ってきているロシアとによる多極化が進むことになるでしょう。
またアジアにおいても、今後その成長を期待される中国が中心となり、ASEANとの間に緊密な関係を持った巨大な政治・経済マーケットが生まれる可能性は否定できません。
このことは、アメリカが6カ国協議における北朝鮮問題を中国に丸投げしている態度から見ても、「悪の枢軸」に対する戦争が惨敗に終わった場合に、アジアの多極化の中心が中国になることおそらく避けられないでしょう。
こうした世界の多極化構造への大転換の中で、これまで対米従属戦略を貫いてきた日本は今後どこへ向かって歩き出せばよいのでしょう。
ということで、次回はいよいよ最終回。
安倍新政権の今後の政治的方向性について、日本文化の特性を軸に議論したいと思います。


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