第21回参院選:自民大惨敗・民主大勝利
2007年7月29日の第21回参院選では、改選議席の党派別獲得議席数が以下の通り確定し、自民・公明与党の大惨敗、民主党の大勝利という結果に終わりました。
党名・選挙区・比例区・合計
自民 23 + 14 = 37
公明 2 + 7 = 9
民主 40 + 20 = 60
共産 0 + 3 = 3
社民 0 + 2 = 2
国民 1 + 1 = 2
日本 0 + 1 = 1
無所属 7(野党系6+与党系1)
自民党は89年の宇野内閣以来の大敗を喫し、安倍政権への不信任が突きつけられた結果となりました。
一方民主党は、改選議席で60議席を獲得し、自民党が55年に結党して以来保持してきた参議院第1党の座を初めて占めることになりました。
すさまじい選挙結果になりましたね。
以下いくつかの点に注目して雑感を述べたいと思います。
☆与党大敗の敗因(1)☆
今回の参院選で最も注目すべき点は、一人区で自民党が大敗したことです。
地方・農村部での自民党の大敗が、与党大敗の最大の要因でした。
これまで自民党の支持率が圧倒的に高かった地方(特に地方の年配者による支持が高かった)において、自民党支持が得られなかったというのは、過去に例を見ない驚くべき現象だっと思います。
今回の結果は、従来の自民党による集票組織が機能していなかったことを意味しています。
では、なぜ機能しなかったのか。
これまでは、基本的に地方の集票組織は利益集団でもあり、利害の一致による自民党支持がその根底にありました。
しかし、前小泉首相から続く地方切り捨て政策により、そうした利益集団が弱体化・解体させられたために集票組織が機能しなかった、あるいは逆に離票組織として機能した、ということではないでしょうか。
今回の選挙では地方から国政へのNOが突きつけられた結果になったわけですが、その原因の一端が地方における利益集団の解体にあるかもしれないと考えると、やや後味の悪さが残る結果だったとも言えます。
☆与党大敗の敗因(2)☆
もうひとつの大きな敗因は、何と言ってもマスコミによる民意扇動です。
前回の郵政選挙でもそうでしたが、最近はマスコミの民意扇動による大敗・大勝というパターンが多いような気がします。
今回も有力メディアによる「日替わりネガティブキャンペーン」とでも言うべき安倍内閣叩きが、選挙期間の最後の最後まで展開され続けました。
自民党批判報道が各地で垂れ流されている状況下で、なんとなく民主党の方がよさそうだということで投票した国民もかなり多かったかと思います。
また前回の「郵政選挙」、今回の「年金選挙」と、わかりやすいイメージを作り上げ、論点を単純化することで視聴者に対して「やさしい」選挙解説を行い続けたのもマスコミです。
そして国民のみならず、政党すらもマスコミの戦略には翻弄され続けました。
奇しくもマスコミの中枢に位置されるジャーナリスト櫻井よしこ氏によって、その問題点がずばりと指摘されています。
「年金問題は国民の国家への信頼感を受け止めきれなかったという意味で大事な問題ではある。だが、今回選ばれる参院議員の任期は6年間ある。その任期の中では、憲法改正が非常に重要なテーマになるだろう。そうした論点を抜きにして、年金制度などの技術論だけで参院議員を選ぶのはあまりにも残念だ。」
「参院選で、年金に議論が集中しているのは、国民にとって切実であるとともに、民主党が選挙戦の争点に年金問題を設定し、それを朝日新聞をはじめとする一部メディアがあおった面はある。しかし、安倍首相・自民党も憲法改正でなく、年金を最大の争点にした。6年間の任期で解散がない参院議員を選ぶ選挙では外交や安全保障など、国家の基本的な問題を考えなければいけないのに、それを問い続ける覚悟がない。争点を年金にしたのは首相のある種の弱さの反映ではないか。」(何たる選挙戦(4):櫻井よしこ)
マスコミは(良いか悪いかは別として)基本的に視聴率が取れればそれでいい、という集団です。
受動的に情報を受け取る視聴者に対して、難しい理屈をこねるようなことはしません。
最近はネットの世界でも同様のことが起きている気もします。
(一部の人気ブロガーたちによる熱狂的なネガティブキャンペーンなど)
私自身は安倍政権の退陣を希望しており今回の結果はそれにかなうものでしたが、以上のようなマスコミによる民意扇動の影響の大きさを考えると、与党大敗を素直に喜ぶ気にはなれないのも事実です。
あまりにも偏った結果が地滑り的に起きてしまう現状は、やはり民主主義国家としてはまずい状態にあるといえるでしょう。
☆投票率の低さ☆
比較的国民の関心が高いと言われた今回の参院選でしたが、結局投票率は前回を辛うじて上回る58.64%(推計)にとどまり、過去6番目に低い数字となる模様です。
いいですか、国民の半分近くが投票していないのです。
あなたの周りにいる人の2人に1人は投票していないのです。
毎度のことなので低投票率に対して感覚がマヒしていますが、冷静に考えると恐ろしいことですよね。
もはや選挙制民主主義が成り立っていない、と言ってもよい状況だと思います。
投票行為に対しては、いろいろな考え方があることでしょう。
選挙権を放棄することをはっきりと述べている人も中にはいます。
「わたしが貴重な時間を費やして選挙権を行使しても、やっぱり世の中は一部の人の思い通りになっているのだから、それなら最初から行使しなければよいのではないか、と思うのです。少なくとも誰に投票するかについて考えた累積時間と投票時間で、1回の選挙で考えると数時間程度は費やすことになろうかと思うのですが、まだ、その時間で、仕事をするとか、本を読むとか、音楽を聴くとかした方が、自分にとっての世界は、より大きく変わるのではないかと思います。」(「選挙権を放棄する」というライフハック)
日本が民主主義国家である以上、どんな考えであってもそれを頭から否定することはできません。
国政に関心を持たずに無視していても、生きていく上でどれだけ困るかはわかりません。
しかし、上記のような「積極的な無関心」ならまだしも、「消極的な無関心」で選挙に行かない人に対しては、やはりそれはまずいよと言いたいです。
なんとなく投票に行かない人、投票に行くことがバカらしいと思っている人。
世の中にとって一票の重みなんて無いに等しいかもしれませんが、自分にとっての一票の重みは大きいですよ。
その一票がきっと明日の政治を考える一歩につながるはずです。
さらにタチが悪いのは、投票に行く人・行為をバカにすることで自分の批判精神を満足させようとする人。
屁理屈はもういいですから、結局あなたは何がしたいのですか。
ネガティブな言葉をばらまいても世の中は良くなりません。
積極的に自らを、周りを、よりよい方向に変えるべく動きましょう。
投票率が80%を超えるようなことはなかなか起きそうにありませんが、もしそれが実現されたら日本の政治は何か変わるのでしょうか。
変わるのか変わらないのか、それを見極めるためだけにでもいいので、みんなに選挙に参加してもらいたいと思います。
☆これから☆
今回の結果は、自民党大敗による安倍政権に対する不信任を反映したものであったことは明らかでしょう。
しかし、民主党大勝がそのまま民主党支持を反映しているかと言うと、それはわかりません。
これまで民主党を中心とする野党は、与党に対して「反対」することで国民の人気を獲得してきました。
今回の選挙においても、「反自民」を前面に押し出して各地で支持を集めました。
彼らの政策を理解・評価したうえで支持していた国民は、はっきり言って多くはなかったでしょう。
(私自身も「反自民・反安倍政権」であっただけで、「民主支持」では特にありませんでした)
最近は、支持政党を積極的に作らずに、国政の「バランス」を重視して投票する人も増えてきているようです。
つまり、前回の小泉自民党圧勝をうけて、バランスを保つために今回は民主党に投票した人、あるいは、政権の長期固定・短期変動を避け、適度な間隔で政権交代が行われることを希望する人、こうした人が周りにも多いような気がします。
結局はこうした「バランス感覚」が民主主義政治においては一番大事なのかもしれませんね。
そういう意味では今回の結果に対しては、やはり国民はバカではなかった、適切な判断を下した、と結論づけてもいいのかもしれません。
さて、朝日新聞社が全国で実施した投票者への出口調査では、全体の56%が安倍首相に退陣を求めているそうです。
それに対して安倍首相は、開票後かなり早い段階で続投の意志を表明し、
「反省すべき点は反省していかないといけないが、私の国造りはまだスタートしたばかりだ。改革を進め新しい国をつくっていくために、これからも総理として責任を果たしていかなければいけない」
と答えています。
安倍首相が続投するのは私としては不本意ですが、続投する以上、せめて今後は独裁的な強行政治を改め、
「今回第1党となった民主党とも、参院で協議すべきは協議し、協力しながら国造りを進めなければならない」
の言葉通りに、バランスのとれた国政を行っていただきたいと思います。





