うつくしい子ども 石田衣良(文春文庫)

近所の女の子が山の中で殺された。
犯人は13歳の僕の弟だった!
[tmkm-amazon]4167174057[/tmkm-amazon]
本書が出版されたのは1999年。
あの「酒鬼薔薇事件」(1997年)に触発されて書かれた少年犯罪モノだといえます。
なぜ弟は殺人を犯したのか?弟の心の闇を兄は理解してあげることができるのか?
そうした問いかけが本書の大きなテーマとなっています。

とは言っても、実際には青春推理モノとして書かれており、内容の重さに対してかなり軽めの文体でサクサク読めるようになっています。
謎解きの要素もふんだんに含まれていて、小説として飽きさせない作りになっているのは、さすがは石田衣良といったところでしょう。

その一方で、メインテーマである少年犯罪に関しても、他の作品に比べより冷静にその本質を描き出すことに成功していると思います。
(例えば「酒鬼薔薇事件」の犯人である「少年A」の両親によって書かれた『「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記』などは、当事者であるが故の認識の甘さや感情的解釈が目立ってしまっていると思う)

ただ最近は多様な犯罪の低年齢化が進み、「少年犯罪」という言葉の持つインパクトもだんだん薄れてきてしまっていますね。
そういう意味では、今読むのにはちょっと向いていない本かもしれません。
(むしろ高齢者同士での事件が増えてきていることの方が問題だし・・・)

次は「高齢者犯罪」についての小説の出現を待ちたいところです。

☆他の人の記事も読む☆
桃花源記
“やぎっちょ”のベストブックde幸せ読書!!

1 Trackback / Pingback

  1. mind's eye

Leave a Reply

Your email address will not be published.




CAPTCHA