原始惑星の衝突進化および化学進化にもとづく地球形成過程の検証に関する論文が PSJ に accept されました。
“Multiple Giant Impacts and Chemical Equilibria: An Integrated Approach to Rocky Planet Formation”
H. Maeda & T. Sasaki, PSJ, in press.
arXiv: https://arxiv.org/abs/2509.12713
以下に論文の内容についての簡単なまとめを載せておきます。興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。
概要:
地球型惑星の形成過程において、成長中の原始惑星の表層はマグマオーシャンと原始大気が共存する特異な環境にあった。十分に大きな原始惑星は、原始惑星系円盤から水素に富むガスを捕獲し、それがマグマオーシャンや鉄コアとの間で化学平衡を達成することにより、惑星内部の化学組成が規定される。本研究では、このような原始的環境条件下における地球型惑星形成を統合的に理解するため、N体シミュレーションによる原始惑星の衝突成長と、各巨大衝突時における大気—マグマオーシャン—鉄コア間の化学平衡計算を組み合わせた新しい枠組みを構築した。
シミュレーションの結果、惑星成長は多数の巨大衝突を経て進行し、そのタイミングが円盤ガスの散逸過程とどのように重なるかが揮発性物質の収支、とりわけ水素の取り込み量に大きく影響することが明らかとなった。円盤ガスが豊富に残存する時期の初期衝突では、原始惑星のコアに過剰な水素が取り込まれ、コアの密度欠損が過大となる。一方、円盤ガス散逸後の後期衝突では、水素に乏しい天体との合体によりコア内の水素量が希釈され、地球に近い密度欠損値へと調整され得ることが示された。また、水素の再平衡過程は有限であり、初期に取り込まれすぎた水素を完全に放出することはできないが、後期衝突の繰り返しによりコア密度欠損が緩和され、最終的に現在の地球コア(約7.5–10%の密度欠損)と整合する値に収束しうることが確認された。
さらに、本研究では地球の水の生成過程や酸化状態の進化についても検証し、原始惑星の大気・マグマオーシャン・鉄コアの三層相互作用が、揮発性元素の保持と放出のダイナミクスを決定づけることを示した。特に、1 AU 近傍においては、原始惑星系円盤ガス散逸後の後期巨大衝突が地球の内部組成を形成する有効なメカニズムであることが強く示唆される。
本研究は、惑星の軌道力学的進化と地球化学的進化を同一の時間枠組みで扱うことで、これまで分断的に研究されてきた分野を統合し、地球を含む岩石惑星の形成過程の理解に新たな視座を提供するものである。

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