先端理学コミュニケーション特論(1/2)

今日と明日、「大学院教育イニシアティブ先端理学コミュニケーション特論I」という長い名前の集中講義を受けてきます。

今日のお題は「心と科学コミュニケーション」で、2時間半程度の講義が3つ。

・菊池 誠(大阪大学教授)「ニセ科学」

・池内 了(総合研究大学院大学教授)「禁断の科学」

・山崎茂明(愛知淑徳大学教授)「科学者の不正行為」

うーん、なんともキャッチーなタイトルではありませんか。
久しぶりにワクワクしながら講義を受けてきました。
以下に簡単に内容をまとめておきます。

○菊池 誠「ニセ科学」
血液型性格判断、マイナスイオン、水からの伝言などのいわゆる「ニセ科学」についてどう向き合うか、というお話。
結局、ニセ科学をひとつひとつ潰していってもしょうがなくて、そもそも「正しい科学」が何であるのかをきちんと伝え、科学リテラシーの向上を図っていくより他はない、というのが結論でしょうか。
しかし現状は、科学者は業績を上げることに必死にならざるを得なくて(生活がかかってる)、そんな啓蒙活動的なことはやってる暇がない、と。
この辺りのジレンマが難しい問題となっています。
なおこの問題については菊池先生本人のブログに詳しく書いてありますので、ぜひそちらをご参照ください。
kikulog:http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/

○池内 了「禁断の科学」
科学者にとって研究をやること・世界初の発見をすることは何物にも代え難い魅惑的な果実はあるが、その魅力に取り憑かれて「禁断の科学」に手を出してしまう危険も一方ではある、というお話。
つまり、戦争利用の科学を代表とした、倫理的に間違った方向へ進んでしまう研究にもついつい研究の魅力から手を出してしまうのが科学者であり、その危険性をしっかり認識しておくことは大事なことだ、ということです。
平和な時代にこそしっかり考えておくことが必要ですね。
突然環境が変わって、その変化に呑み込まれてしまった後では、たぶん冷静な判断や考察ができなくなると思うので。

○山崎 茂明「科学者の不正行為」
最近流行りの(?)データ捏造や論文盗作・偽造などについて、不正はある個人による特殊な例ではなく、誰もが罹る可能性のある一種の病気のようなものであるから、そこから目をそらさずにしっかり対処法を考える必要がある、というお話。
特に、研究者の置かれている環境によっては不可避的に(もちろん完全に不可避なわけではないのですが)不正行為に突き進んでしまう可能性もある、ということを自覚しておくのが重要なようです。
ちなみに去年のNatureの記事で「アメリカの研究者の3人に1人は何らかの重大な不正行為を行ったことがある」という報告があったそうですね。
これはかなり衝撃的な報告です。
この記事に関しては、原論文を読んだ上でまた改めて紹介したいと思います。

以上、これから一研究者として生きていく上で、考えさせられることの多い集中講義でした。

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なお、今日の日記ではまだちゃんと考えがまとまっていないのでザッと表面的に内容を紹介するだけに終わっていますが、近いうちにこれらのテーマについては自分なりに考えをまとめて記事を書いておきたいと思います。

2 Comments

  1. 3人に1人が重大な不正行為とは,衝撃的な報告ですね.まわりの人間を無作為に3人選んでみても,不正行為しそうな(と言うかできるほど度胸のありそうな)研究者は見あたりません.publishした論文に計算間違いがあったのにerrataを出さなかったという程度なら沢山いますけど.原論文のほう,ぜひご紹介ください.

    PS: 初めまして,wordpress のダッシュボードからやってきました.

  2. >LiLA管理人さま
    コメントありがとうございます。
    僕もこのお話にはかなりびっくりしました。
    今日中に原論文を読んで、ブログで紹介したいと思います。

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