様々な人物の視点からそれぞれの一人称で物語が進んでいく、長編恋愛(不倫)小説。
なかなかドロドロとしております。
[tmkm-amazon]4087487385[/tmkm-amazon]
老若男女あらゆる人物の内面を見事に描き出せる彼女の想像力と創造力はさすが。
みなさんも本書を読み進めていくうちに、自然と様々な人物の行動や感情を追体験することになるでしょう。
いろんな人生をいっぺんに味わえるのも、本作品の魅力かもしれませんね。
さて少し脱線しますが、本作品では「女性と仕事」というフェミニズム的なテーマも重要な要素のひとつになっています。
本書が出版されたのは1994年。
80年代中頃に上野千鶴子らによってフェミニズム運動が社会全体に大きく広められてから約10年の頃です。
フェミニズムの思想が一般に広がり、ある程度熟成してきたところで発表された作品ということになります。
山本文緒さんはプラナリアでのニート問題もそうですが、社会全体がある問題に対して順応し始めた絶妙のタイミングで、その問題をテーマにした作品をうまく仕上げている感がありますね。
さてここからさらに脱線。
上野千鶴子という強烈なキャラクターによって支えられてきたフェミニズム運動ですが、驚いたことに最近の大学生は「フェミニズム」という言葉も「上野千鶴子」という名前も、ほとんど知らないというのです。
(参考:内田樹の研究室: エビちゃん的クライシス)
これはけっこう衝撃的じゃないですか?
確かにいわゆる「フェミニスト」と呼ばれる人たちは偏った考え方を持っていることが多くて、容易に受け入れることはできませんでしたが、それでも忘れ去られてしまうのはやはりよくない気がします。
たとえ支持が得られなくとも、常に偏った理想論を唱え続ける人たちというのは、日本が民主主義社会である以上必要な存在なのです。
(政界における共産党のようなもの?)
単に学力低下による問題なのか、あるいは「美しい国」を目指す現体制による問題なのか。
はたまた上野千鶴子に視聴率を取る力が無くなったとして切り捨てたマスコミの問題なのか。
なんかいろいろ考えちゃいますね。
☆他の人の記事も読む☆
それでも明日はくるから・・・
ひまわりの独り言・・・
Leave a Reply