L. J. Richardson, D. Deming, K. Horning, S. Seager and J. Harrington, A spectrum of an extrasolar planet, Nature 445, 892-895 (2007)
HD 209458b のトランジット時のスペクトル観測から大気成分に制約を加えよう、という論文です。
○観測
HD 209458b の secondary eclipse を 7.4-14.5μm で2回観測
○結果
図1:掩蔽の効果(フラックス減少)が確認された
図2:波長ごとの、惑星と中心星のフラックスの差からいくつかの feature を確認
・7.78μm emission → 図3参照
・9.65μm broad emission → 3つの可能性
・8.6μm and 9.3 μm absorption → 微妙なのでここでは無視
9.65μm centered broad emission について
(1)7-9μm の水の absorption のせいで emission に見えている
solar abundance で考えると水を大量に持っているはずなので妥当?
しかし以前の我々の 2.2μm の観測で水の量が少ないことを示唆
(Richardson et al., ApJ (2003))
今回の観測からは solar abundance ではないことも示唆
→ 水の absorption で説明するのは難しい
(2)silicate cloud 中の 9.7μm の Si-O の emission
大量の silicate cloud が温度勾配が逆転した成層圏に存在すれば説明可
大量の silicate cloud の存在は HD209458b の他の観測結果とも調和的
(3)ダスト層からの emission
大気が大規模散逸していて、かつ光学的に厚い大気なので可能性あり
図3:7.78μm emission をメタンの emission で説明しようとすると、ピーク位置がずれる
hydrocarbons の C-C による emission の可能性もある
→ Spitzer での観測を待とう
○メモ
図2のS/Nが極めて悪いが、彼らの統計処理通りに2つのピークがリアルだと信じても大丈夫?
無視された2つの吸収は本当にエラー?
リアルだとすると何の吸収に対応するのか?
リアルであるとまずいことになるのか?
それぞれの emission, absorption に対応するものがいろいろありそうだが、何をどう観測すれば決定できる?
solar abundance とは全く異なる可能性(特に水が少ないこと)はおもしろい
Leave a Reply