Ida, Ueta, Sasaki & Ishizawa, Nature Astronomy (2020)

天王星衛星の形成に関する論文が Nature Astronomy から publish されました。

“Uranian satellite formation by evolution of a water vapour disk generated by a giant impact”
S. Ida, S. Ueta, T. Sasaki & Y. Ishizawa, Nature Astronomy, (2020)
https://rdcu.be/b3i2X

以下に論文の内容についての簡単なまとめを載せておきます。興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。

概要:
 天王星は自転軸が 98° 傾いており、過去に巨大衝突を経験した可能性が高いと考えられている。また天王星の周りの衛星系も同じように傾いて回っていることから、これらは巨大衝突により生じた周惑星円盤内で形成された可能性が示唆されている。しかし、巨大衝突に関する数値シミュレーションの結果から予測される周惑星円盤は、一般に現在の衛星系よりも半径が1桁小さく、一方で質量は2桁大きい。
 本研究では解析的なモデルを用いて、天王星衛星系の形成が周惑星円盤の進化過程によって制約されることを示した。水氷の蒸発温度が高いこと、天王星および衝突天体ともに氷が主成分であることを考えると、巨大衝突によって生じた周惑星円盤は初期にはほとんどが蒸発しているはずである。円盤の温度が下がって氷の凝縮および氷粒子同士の付着成長が始まるまでには十分長い時間がかかるため、円盤の拡散によって現在の衛星系の半径にまで広がるとともに、水蒸気の大部分が失われることが示唆された。予想される最終的な凝縮氷の分布をもとに N 体計算を行ったところ、現在の天王星衛星系の軌道-質量分布を再現することに成功した。この衛星系形成シナリオは、巨大衝突により生じた円盤の約半分が短期間に集積して月を形成する場合とは対照的である。

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.




CAPTCHA