プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 雨宮処凛(洋泉社新書)

若者たちの凄惨な現実を見よ。こんな日本に誰がした。
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プレカリアート【precariato】
「Precario(不安定な)」と「Proletariato(プロレタリアート)」の造語。不安定な雇用・労働状況における非正規雇用者・失業者を総称していう。

不安定な労働環境の下、住む場所を失い「ネットカフェ難民」や「マック難民」になってしまうプレカリアートたち。彼らは、住む場所が無いために定職に就くことができず、定職に就けないためにお金も貯まらず、お金が貯まらないので住む場所を確保できない・・・という「貧困スパイラル」とでも言うべき悪循環に陥っています。最近になってようやくネットカフェ難民の救済へ向けての動きもスタートしましたが、量・質ともにまったくもって不十分なのが現状でしょう。

日本社会にプレカリアートを大量に生み出した原因として、著者は95年の「新時代の日本的経営」レポート(日経連発表)を挙げています。このレポートの中で、労働者は以下の3種類に分けられました。

「長期蓄積能力活用型」:幹部候補生レベルのエリート正社員

「高度専門能力活用型」:特別なスキルを身につけたスペシャリスト

「雇用柔軟型」:いつでも使い捨てにでいる激安労働力(いわゆる「非正規雇用層」)

このレポートをもとに、企業にとって便利な「非正規雇用」という雇用形態が大量に生み出されることになったのです。現在多くの若者が非正規雇用による不安定な就業環境におかれているのは、若者たちの自己責任による問題ではなく、若者を犠牲・踏み台にするような政策がとられてきたからに他なりません。

現代のプレカリアートたちにとって、状況は悪化の一歩をたどっています。貧困の負の連鎖から逃れられないのみならず、貧困層を喰いものにする「貧困ビジネス」(サラ金・派遣・ウィークリーマンション等)からは何重にも搾取され、最終的にホームレス・餓死という最悪の末路をたどる若者も少なくありません。

現実を知れば知るほど、凄惨な現状と絶望的な未来が、いまそこにあるリアルな問題としてひしひしと伝わってきます。手遅れになる前になんとかしなければいけない、という思いが心の底からわいてきます。


そして、そうした思いはついに「行動」として結実し始めました。「プレカリアートメーデー」こと「自由と生存のメーデー〜プレカリアートの反抗〜」を皮切りに、全国各地で同時多発的にプレカリアートたちによるデモが起き始めています。この件に関してはまた改めてエントリを書きたいと思いますが(追記:エントリ書きました)、切り捨てられ踏み台にされてきた若者たちが、生存権を求めて自ら立ち上がっている現在の状況を、ぜひみなさんにも知っていただきたい、そして応援していただきたいと思います。

全国各地でプレカリアートたちが集まり、反撃を開始している。黙っている必要などまったくないのだ。



さらに本書では赤木智弘氏と世代を超えた3名のゲストを迎えた、座談会形式の “バトル” の模様、および石原慎太郎都知事との対談の内容も収録されています。いずれも噛み合わない部分・激しく対立する場面も多いのですが、お互いにわかり合うための第一歩として、こうした世代間の対話は今後もいろいろな形で行われていくべきだと強く感じました。

プレカリアートの旗手として、現代日本のジャンヌ・ダルクとして、著者雨宮処凛氏のさらなる活躍を期待しています。

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