Ishizawa, Sasaki & Hosono, ApJ (2019)

天王星衛星の形成に関する論文が ApJ に accept されました。

“Can the Uranian Satellites Form from a Debris Disk Generated by a Giant Impact?”
Y. Ishizawa, T. Sasaki & N. Hosono, ApJ, in press.
arXiv: https://arxiv.org/abs/1909.13065

以下に論文の内容についての簡単なまとめを載せておきます。興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。

概要:
 天王星の衛星はジャイアントインパクト(GI)によって形成された説が提案されている。天王星の GI 直後までの過程は Slattery et al. (1992) によって粒子法流体計算、SPH (Smoothed Particle Hydrodynamics) を用いて検証され、自転軸の傾きおよび自転周期が多くのパラメータで再現できることが明らかにされた。しかし解像度が低く、どのようなデブリ円盤が形成されるか不明であったため、その後の衛星形成過程は検証されてこなかった。その後 Kegerreis et al. (2018) によって、Slattery らと同様の衝突計算が新たに高解像度で行われ、天王星衛星形成に十分な質量の H2O と岩石が共回転軌道を超えて軌道にばらまかれることがわかった。
 本研究では、粒子法による先行研究の結果から示唆される GI 後の広いデブリ円盤を初期条件としてモデル化して衛星の集積過程を記述する N 体計算を行い、その場形成によって天王星の衛星形成が説明できるかを検証した。また惑星の潮汐トルクによる衛星軌道進化に着目し、N 体計算で得られた結果からの衛星の軌道進化を解析的に計算した。
 その結果、GI 直後の円盤のべきを持ったデブリ円盤のもとでは、現在の天王星の五大衛星の軌道−質量分布を再現することは不可能であることがわかった。この結果は、GI による天王星衛星形成を実現するためには円盤の粘性進化を考慮することが必要であることを示している。一方で、より内側に存在する小さな衛星たちについては、外側から移動してきた衛星の潮汐破壊によって生じたデブリ円盤から形成可能であることがわかった。

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