本研究では、恒星のスーパーフレアが系外惑星のハビタビリティに与える影響について、系外惑星の様々な大気構成(地球型、CO2リッチ、H2リッチ)のもとで定量的に評価するための初の包括的なモデルを提案した。
まずKepler宇宙望遠鏡のデータから導出された恒星黒点面積に基づき、スーパーフレアのエネルギーを推定し、これを入力としてモンテカルロシミュレーションPHITSを用いた大気内放射線の伝播モデルを構築した。このモデルにより、恒星から放出される高エネルギープロトンが大気中で生成する二次粒子(中性子やミューオンなど)の影響を詳細に評価した。結果として、地球のような1気圧の大気圧を持つ惑星では、スーパーフレアによる放射線量は多細胞生物の致死線量には達しないことが示された。しかし、大気圧が地球の10分の1程度まで薄い場合、TRAPPIST-1eやProxima Centauri bの表面放射線量は致命的なレベルに達する可能性があることが判明した。
また、スーパーフレアによるXUV放射が大気散逸を引き起こす可能性があることもわかり、特に低質量恒星系において惑星が主星に近い軌道を周回する場合、大気散逸が加速することが示唆された。このような環境では、年間フレア頻度が高い場合、惑星表面における放射線量がさらに増加する可能性がある。例えば、Proxima Centauri bやTRAPPIST-1eでは、地球型大気を仮定した場合でも、フレアエネルギーが一定の閾値を超えると複雑な生命が生存するのは困難となる。

フレアエネルギー、大気組成、磁場強度などをパラメータとして、様々な状況下での放射線被爆量を総合的に計算した結果の一例。
本研究は、恒星の活動性が系外惑星のハビタビリティに与える影響を定量的に理解するための重要なステップであり、従来の「液体の水が存在する領域」に基づくハビタブルゾーンの概念を拡張するものである。今後の課題として、より広範な恒星スペクトルデータや観測データとの比較、さらには大気構成の詳細な変化を考慮したシミュレーションを行うことが重要である。
*詳細はこちら*
Yamashiki, …, Sasaki et al., Impact of Stellar Superflares on Planetary Habitability, The Astrophysical Journal, 881, 114(24pp) (2019) [pdf]
Leave a Reply