系外スーパーアースの大気散逸に伴う軌道進化

近年 Kepler 宇宙望遠鏡などの活躍によって系外惑星探査が大きく進展し、数多くの系外惑星が発見されてきた。中でも中心星の近傍を回る super-Earth の発見数が飛躍的に増加しており、発見された super-Earth は分厚い大気を持つものからほとんど大気を持たないものまで様々である。また、系外惑星の分布からは、半径 1.5–2.0R⊕ の惑星が少ない(”radius gap”)、海王星サイズの惑星が少ない(”Neptune desert”)などいくつかの特徴があることも分かってきている。

このような系外惑星の多様性や統計的な分布における特徴の起源は明らかになっていないが、惑星からの大気散逸が重要な役割を担っていると考えられている。実際、観測により示されている特徴のいくつかは、大気散逸によって説明できるということが示されてきた。ただし、過去の研究では、大気散逸を経験する惑星の軌道は変化しないと仮定して計算が行われてきた。しかし実際には、中心星-惑星系全体の軌道角運動量を考慮すると、大気散逸による質量損失に伴って惑星が外側に移動するという軌道進化が起きると考えられる。

本研究では、super-Earth の質量-軌道分布の理解を目的とし、惑星大気の光蒸発に伴う軌道進化が最終的な惑星系の構造に与える影響、そして観測された惑星分布における特徴が軌道進化を含めても再現されるのかを調べた。FGKM 型星の周りにある H2/He 大気を持つ super-Earth の大気散逸および軌道進化を、中心星のX 線・極紫外線(XUV)照射の下で計算した。その結果、G 型星周囲では、コア質量が約10地球質量以下で H2/He 大気を持つ super-Earth は、中心星から 0.03~0.1 au 以内で外向き移動しやすいこと、および、M 型星の場合は 0.01~0.03 au 以内で外向き移動しやすいことがわかった。

以上の結果より、大気散逸に伴う軌道進化は TRAPPIST-1 系のような軌道間隔の狭い密集 super-Earth 系では特に重要になってくることが分かった。さらに、軌道進化を含めた場合でも FGK 型星周りにおける惑星分布の特徴が再現され、観測と整合するということが確認できた。一方、M 型星周りにおける惑星分布の特徴は、高い中心星 XUV 輝度を持つモデルによってのみ再現されることがわかった。

さらに本研究では、super-Earth の初期大気質量やコアの質量組成が軌道進化と大気損失に与える影響についても調べた。質量の小さい惑星ほど大気損失が進行しやすく、大気が失われた後の軌道半径の増加も顕著になる。一方、質量の大きなコアを持つ惑星では、初期大気を保持する能力が高く、軌道進化も抑制される傾向が見られた。

XUV の強度が弱い場合(左)と強い場合(右)の、G 型および K 型星回りでの惑星の軌道-惑星半径分布。カラーバーは惑星の大気量を示している。

今後は観測によって M 型星周りの super-Earth 系が多数発見されることが期待されるため、本研究の結果はそのような観測に先駆けた理論的予測となりうる。また、将来的には観測データと計算結果を比較することで、本研究で用いた理論モデルを再検証することも可能となる。

*詳細はこちら*
Fujita, Hori & Sasaki, Orbital Evolution of Close-in Super-Earths Driven by Atmospheric Escape, The Astrophysical Journal928, 105(13pp) (2022) [pdf]

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.




CAPTCHA