水曜の朝、午前三時 蓮見圭一(新潮文庫)

こんなタイトルの本が書店に並んでたら、そりゃ買いますって。
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タイトルにやられ、四条直美の言葉にやられ、バックを流れる音楽にやられ、やられっぱなしの読書でした。
こういう、直感的にやられる感覚、江國さん以外の本では久しぶりに味わった気がします。

四条直美。
できることなら、本の中に入って彼女の声を聴いてみたい。そして生まれる前に戻って彼女に出会いたい。

できることなら、臼井さんの代わりに彼女と恋をしてみたい。

“十年たって変わらないものは何もない。二十年たてば、周りの景色さえも変わってしまう。誰もが年をとり、やがて新しい世代が部屋に飛び込んでくる。時代は否応なく進み、世の中はそのようにして続いていく”

世の中はそのようにして続いていく、こんな言葉を四条直美に確信的なトーンで語られたら、そりゃあ惚れるしかないでしょう。
この人生に対する前向きな覚悟、これが四条直美。

大阪万博、高度経済成長、狂乱の暁、その中で美しく立ち上がるひとりの女性の人生。
その一瞬のきらめきが、四条直美の人生の全てをやわらかに照らし、そしてその背景を時代は知らん顔をして流れていく。

いい小説です。
彼女の人生のあらゆる場面が、一瞬の物語を通して心に染み入ってきます。
あまりに激しく切なく、そして最後は悠然と。

四条直美という女性に出会えたこと、彼女の人生に触れたこと、彼女の言葉を感じたこと。
すべてが素敵な思い出になる、そんな本です。

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