金閣寺 三島由紀夫(新潮文庫)

10年ぶりぐらいの再読でしたが、やっぱり面白いですね。
全ての文章がしっかりとしたベクトルを持って、強い圧力を伴いながら読者に向かってくるような、そんな小説です。
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主人公も老師も柏木も鶴川も、登場人物全員が深い影をどこかに抱えながら、それぞれに影響し合い複雑な小説世界を描き出していきます。
そして、その渦巻く人間関係の中で主人公は「美」の本質について悩み抜き、最後は金閣放火を極限とした行為に向けて突き進んでいきます。

主人公の金閣に対する美の認識は、想像から現実へ、直観から経験へと移り変わりながら、最後は再び夢想的な金閣に対する直観的な行為へと収斂するわけですが、この最後の金閣放火へと向かう主人公の心理描写は見事としか言いようがありません。
金閣という「美」の全てをあらゆる角度と視点から、あらゆる空間軸と時間軸から認識し尽くした主人公が、その「美」へ対する「行為」という形で自分と金閣との関係を昇華(消化?)しようとする心の動きをはっきりと描けること自体、やはり三島由紀夫は天才だったと言うしかないのでしょう。

美の追究の仕方がいかにも三島的であることにある種の嫌悪感を感じる部分が無いとは言えませんが、それでも近代文学における金字塔の一つとしてこれからも確実に読み継がれていく作品であることは間違いないと思います。

こういう「本当の名作」はまた10年後、20年後と時間をおいて何度も何度も再読していきたいものですね。

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*日常夢幻**: 読書日記@金閣寺

2 Comments

  1. >蜂の巣さま
    コメントありがとうございます。
    そうですね、やはり彼は天才だったんだろうな、と思ってしまいますよね。
    最近の作家さんで、これほど天才的な文章と構想を表現できる人はなかなかいないと思います。

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