ドキリとあるいはヒヤリとさせられる短編集です。
ニート・フリーター・プータロー、呼び名はいろいろありますが「無職」という現代的なテーマについて、複数の視点から多層的に捉えて書かれた作品群が並びます。
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直木賞を受賞したことでも話題になった本ですが、読み返してみてあらためて感じるところの多い作品でした。
基本的に人物の描き方、物語の構成ともに非常にうまいです。
特にニート女性の中に共存する気楽さと苦しさ、明るさと暗さ、その両方の感情をサラッと行き来してしまうところなどは本当に見事です。
底知れぬ明るさの中に突如現れる虚無感や絶望感。
ついさっきまで穏やかな風景が広がっていたはずなのに、一歩進むと突然目の前に奈落の底が現れるような、そんな恐ろしさを持った作品でもあります。
でもその一方で、そうした不安を一気に吹き飛ばしてしまう気楽さもまた、どこからともなく根拠も無く現れるのです。
これはまさに現代のニートの本質を突いている、のかもしれません。
大学院生というのもある意味ではニートのようなものですからね、読んでいて正直ちょっといたたまれなくなりました。
作品自体はとてもおもしろいのですが、読後感が悪いと言えば悪いかもしれません。
もちろんそうした読後感こそがこの作品の魅力なわけですけど。
ところで、この作品に見られるような苦楽・明暗をサラッと行き来する音楽といえばなんと言ってもシューベルトですね。
特に「未完成」は、前触れ無く現れる絶望の淵に何度落ち込みそうになったことか・・・。
不思議なものです、まさか「プラナリア」を読んで「未完成」のことを想うなんて♪
☆他の人の記事も読む☆
– 楽しく独り言ち♪ –
さとぽん脳内暴露計画
お久しぶりです。おそらく、山田詠美『僕は勉強ができない』についての記事を、トラバしたことをおぼえておられるかと…。
佐々木さんの『プラナリア』の記事を読んでから、自分も買って読んでみました!
なんとなく興味のある内容だったので、軽く頭の片隅に置いてあったのですが、1ヵ月後にふと買ってみようと思って、本屋に行ったときに探したらありました。出版社を覚えてなかったのでちょっと時間かかりましたが…^^:
人の内面の葛藤や不安をとてもうまく描写していて、読みやすかったですね。
ああいう読みやすい小説なら、詠美さん以外でも読んでみたいと思います。
これからも、なにかいい小説があったら、ぜひ紹介お願いします。
>mayさん
お久しぶりです!
今回も丁寧なコメントをどうもありがとうございます。
僕のブログの記事を通して新しい小説と出会っていただけるなんて、とても嬉しいです。
ご紹介したい本はたくさんあるのですが、読んだ直後にブログに書くようにしているので、以前に読んで良かった本はまた再読したときに書くことになります。
最近は良かった本を何度も読む楽しさを覚え始めたので、なるべく素敵な本を再読してこのブログでも紹介していきたいと思います。
また遊びに来てください!