論文紹介:Takanori Sasaki, Glen R. Stewart & Shigeru Ida, 2010, ApJ

先日論文が ApJ にアクセプトされました。せっかくなのでその論文の概要を日本語で紹介します。

Abstract を日本語に直訳しただけなのでちょっと不自然なところもありますが、まあだいたいこんな感じの論文になっています。

“Origin of the Different Architectures of the Jovian and Saturnian Satellite Systems”
Takanori Sasaki, Glen R. Stewart & Shigeru Ida
Accepted to Astrophysical Journal, 2010

木星衛星系と土星衛星系の異なる特徴の起源

木星の規則衛星(母惑星の赤道面内をほぼ円軌道で順行する衛星)は主にガリレオ衛星と呼ばれる4つの等サイズの衛星(内側からイオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)で構成され、最も外側を回るカリストを除いてお互いに平均運動共鳴(2つの天体の公転周期が簡単な整数比になっている場合の共鳴)に入っている。

一方、土星では大きな規則衛星はタイタンのみで、他の衛星たちはそれと比べて非常に小さい。

本論文では、原始衛星系円盤中での衛星の成長と軌道進化を準解析的にシミュレーションすることで、これらの衛星系の異なる特徴の起源について調べた。

先行研究(原始衛星系円盤モデル・ガス惑星形成モデル・若い星の観測結果)をもとに、木星と土星の系にそれぞれ対応する2つの異なる円盤進化・構造モデルを作成した。

本モデルの新しい点は、木星と土星の間で
(1)原始衛星系円盤へのガス降着終息のタイムスケールが異なること
(2)円盤中での空隙の進化が異なること
を考慮した点である。

モンテカルロシミュレーションを行った結果、木星系では主に平均運動共鳴に入った4〜5個の等質量の衛星が形成された。

この軌道配置は、衛星のタイプI移動、円盤内縁での一時的な衛星移動の停止、および木星が原始太陽系円盤にギャップを開けることによる急激なガス降着の終息によって得られている。

一方土星系では、グローバルな原始太陽系円盤の消失に伴う緩やかなガス降着の終息によって、主に土星から遠い位置に大きな衛星が一つだけ作られた。

またシミュレーションによって得られたこれらの衛星系は、質量や構成物質(岩石/氷・内部分化・リング形成など)に関しても現実の木星系・土星系と調和的であった。



オリジナルの論文は5月頃に ApJ に出るそうなのですが、最終版を astro-ph にアップしているので、早く読んでみたい方はこちらをご覧ください。
http://arxiv.org/abs/1003.5737

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.




CAPTCHA