初心忘るべからず

 以下は、大学院入試の「小論文」で書いた内容です。まるで夢物語のような壮大な研究テーマですが、初心忘るべからずということで、常にこの熱い想いを胸に抱きながら研究に勤しんでいきたいと思っています。


 私の行いたい研究は、原始惑星系円盤からどのようにして個々の惑星が形成されるのか、および個々の惑星の性質・特徴がいかに生成されるのか、ということについて理論的に調べることです。具体的には、以下の3段階の研究を考えています。

 まずは、現在続々と見つかっている系外惑星系の多様性を説明するために、惑星形成の標準モデルを見直し、多様な惑星系の進化を統一的な観点で論じることのできる物理モデルを構築することです。現在の標準モデルは、内在的に多様性を生む物理過程を数多く持っています。原始惑星系ガス円盤と大型惑星の重力相互作用、長時間での惑星間相互作用などはその例です。また、原始惑星系円盤の初期条件や境界条件にも問題があります。標準モデルでは材料物質を最小質量で仮定し孤立した惑星系を考えていますが、材料物質の量の変化や星団中での星の相互作用等も考慮すべきです。さらに、現在の標準モデルでは、惑星が角運動量を失い中心星に落ち込む「惑星落下問題」については十分な考察がなされていません。ここでは特にこの惑星移動の問題に注目し、惑星形成の最終ステージ以降の惑星の挙動について一般的な理解を得ることを目指します。

 次の段階は、輻射平衡を基盤とした原始惑星系円盤の一般的なモデルの構築です。原始惑星系円盤の内部では、ダスト粒子が衝突・合体・成長することによってそのサイズが変化し、それによりダストの光学的性質が変化します。ゆえに、様々な輻射平衡状態を考えることによって、円盤内の温度分布・密度分布等を予測することができると考えられます。よってここでは、輻射平衡シミュレーションにより惑星形成における初期ステージの状況について一般的な理解を得ることを目指します。

 以上の2つの研究を踏まえれば、惑星形成における包括的なモデルを構築することができます。すなわち、どのような原始惑星系円盤が、どのような過程を経て、どのような惑星系を作り上げるかということを一般的に議論することが可能となるのです。

 そして最後に、個々の惑星の性質・特徴がいかに形成されるかについて考えます。上で惑星形成に対する一般的な理解が得られているので、惑星系内を各領域に区切って議論することには十分意味があると考えられます。そこでここでは、それぞれの領域における状況、特に化学的な状況に着目し、どのような領域でどのような性質・特徴を持った惑星が形成されるかについて一般的な理解を得ることを目指します。

 以上の3段階を通して、究極的には、全ての惑星の現在のシステムをその起源から解き明かすこと、および系外惑星の性質・特徴等を観測データから予測することができるようになれば、非常におもしろい研究になるのではないかと考えています。

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