メルケル首相の苦悩

ドイツの新首相メルケル氏が、23日のフランスを皮切りに EU 各国の歴訪を開始した。
これから EU 諸国に対して新しいドイツの姿勢を示していきたいところだが、その道のりは険しい。

メルケル政権は中途半端な選挙結果をうけて、苦肉の策とも言える「大連合政権」として誕生した政権である。
その結果、首相を含めた16閣僚ポストをキリスト教民主・社会同盟と社民党との間で半分ずつ分けることになり、このことが外交問題に大きな影響を与えている。

シュレッダー前首相(社民党)がフランスとともに反米路線を取っていたのに対し、メルケル首相(同盟)はイギリスと同じ親米路線を基本としている。
そこで本来ならば、EU 内において「反米→親米」の立場の変更を強調するべきなのであるが、事はそうスムーズには運ばない。

原因は、外相のポストを社民党議員(反米)が抑えてしまったからである。
もちろんこのことは偶然ではなく、首相の座を明け渡す見返りとして、社民党がいくつかの重要ポストを要求したことによる。
メルケル政権は、自己矛盾による鎖に縛られた身動きの取れない政権なのである。

さて、EU 内における対米立場に関しては、基本的にはフランス派になるべきかイギリス派になるべきか、という問題に帰着できる。

しかし、今年いっぱいでイギリスの EU 議長国の任期が満了するので、メルケル首相は来年からは EU の代表としてのイギリスと話をする機会は無くなってしまう。
また、フランスも次期大統領選挙(2007年)に向けて動き出すため、こちらもやはりメルケル首相がフランスと関係を深めていくことが困難になるだろう。

自国の姿勢を定めることもできず、重要国との対話も十分にできそうにないドイツの新政権は、EU 外交において今後どのような「落としどころ」を見つけていくのだろうか。

メルケル首相の苦悩の日々は続く。

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