内部海を持つ地球型惑星の生命居住可能性

液体の水は生命の存在に不可欠であり、したがって、氷で覆われた惑星であってもその内部に海洋が存在する可能性があれば、それは生命の存在可能性を大きく広げる発見となる。地表が完全に氷に覆われた惑星でも、惑星内部からの地熱によって氷が溶け、内部に液体の水を持つ海洋が形成される可能性がある。本研究では、高圧下での氷の相転移や放射性元素の熱生成量、水の存在量といった要因が、惑星の進化スケールにおける内部海洋の形成と安定性にどのように影響するかを定量的に評価した。放射性崩壊による熱流束が十分であれば、たとえ氷で覆われた惑星であっても表面下に液体の水が存在しうることが示された。

本研究では、惑星質量、水量、中心星からの距離、そして放射性熱源の量をパラメータとして設定し、内部海洋が形成される条件をシミュレーションによって詳細に検討した。その結果、地球質量の約0.6〜25倍の水量を持つ惑星で、内部海洋が形成される可能性があることが示された。ただし、水量がさらに多い場合には、内部海洋と岩石層の間に「高圧氷層」が出現し、この層が生命の生息可能性に制約をもたらすことも明らかになった。この高圧氷層は液体水よりも密度が高く、熱伝導率の違いによって熱輸送特性が変化するため、内部海洋の熱的安定性に影響を及ぼす。また、内部海洋が形成された場合でも、それが高圧氷層の下に存在する場合、岩石層との接触が失われるため、生命に必要な栄養塩類の供給が妨げられる可能性が高い。一方で、断層や熱水活動を通じて、栄養塩類が高圧氷層を通過して内部海洋に供給されるシナリオも提案されている。

中心星からの距離と惑星の質量に応じて、様々なタイプの内部海惑星が形成されることがわかる

自由浮遊惑星についても、研究では初期放射性熱源の量が重要な要素であることが示された。中心星からのエネルギー供給がない場合でも、十分な熱流束を持つ惑星は表面下に液体の水を保持しうるが、そのためには惑星質量や水の存在量が厳密に制約される。

本研究の次なる課題としては、多成分水(地球の海水のような溶存塩を含む水)の熱物性や相挙動を考慮したモデルの構築、さらに赤外線の放射特性や温室効果の影響を考慮した解析が挙げられる。これらの研究が進めば、地球型氷被覆惑星の内部海洋の性質とその生命可能性の議論がさらに深化するであろう。

*詳細はこちら*
Ueta & Sasaki, Structure of surface-H2O layers of ice-covered planets with high-pressure ice, ApJ775, 96(8pp) (2013). [pdf]

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