ペブル集積によるガリレオ衛星の “ゆっくり” 形成

本研究では、木星のガリレオ衛星が形成される過程を新しい「ゆっくりしたペブル集積シナリオ」に基づいて再構築した。このシナリオでは、木星周囲のガス円盤(周木星円盤)内に捕獲されたいくつかの微惑星が、ペブルをゆっくりと集積しながら成長していくプロセスを考慮している。本研究の目的は、このモデルが観測されているガリレオ衛星の質量、軌道、組成、および内部構造を同時に再現できることを示すことである。

本研究のモデルでは、ペブルの集積効率や円盤内のガスの流れ、雪線の移動など、多くの物理量をパラメータにとった。また、ガス円盤の内縁では木星の強い磁場によって空隙が形成され、衛星の内向き移動が制限されることを想定している。シミュレーションの結果、イオ、エウロパ、ガニメデの3つの衛星が2:1平均運動共鳴に捕捉され、現在の軌道配置が再現された。

捕獲した微惑星がペブル集積と軌道移動を経て、現在のガリレオ衛星系に進化する様子のシミュレーション結果。

さらに、このシナリオでは、ペブルの集積速度が遅いため、放射性元素である26Alによる内部加熱が衛星の分化状態に影響を与えることが示された。具体的には、ガニメデは完全に分化しているのに対し、カリストは部分的にしか分化していないという観測データが、これらの衛星が異なるタイミングでペブルを集積し始めたことによって説明される。この時間差は26Alの半減期(約0.7Myr)に依存しており、ガニメデがカリストより早く形成されたことがその理由である。

さらに、エウロパの氷の質量比が比較的小さいことも、このシナリオで説明可能である。これは、雪線が円盤進化の最終段階で内側に移動することで、エウロパが岩石質のペブルを先に集積し、その後に少量の氷を含むペブルを集積したためである。また、このモデルでは、ペブルが雪線内で蒸発してもすぐに氷成分を失うと仮定しており、これがエウロパの低い氷質量比を正確に再現する鍵となった。

*詳細はこちら*
Shibaike, Ormel, Ida, Okuzumi & Sasaki, The Galilean Satellites Formed Slowly from Pebbles, The Astrophysical Journal885, 79(19pp) (2019) [pdf]

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