知り合いの薦めで読んでみました。
タイトルだけ見ると経済本やビジネス本のようですが、実際には哲学的なタイプの本です。
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利益追求のみにそのレーゾンデートルを持つ「会社」という組織は先天的に病んでおり(これは良い/悪いという問題ではない)、自らが作り出した会社に縛られている我々はその「病」に対して常に意識的でなければならない、という話から本書はスタートします。
その後、時代の変遷とともに資本主義のシステムが変化し、会社という特殊な存在が生まれ、そこに内在する病が経営者をして数々の不正行為・違法行為を行わしめた、という歴史的な会社・病の誕生についての話が続きます。
自らが作り出し、支配していると思っている会社によって、人は逆に支配されているというパラドクス。
会社に刻印された人間の欲望が、会社が先天的に有する病という形ではね返ってきて、そこに人が呑み込まれてしまう恐ろしさがくっきりと示してあります。
さらにここから、お金でお金を得るという株式会社の特殊性に話は広がり、宗教観や金融の起源、さらには共同体の倫理観へと、次々に話題が展開していきます。
このあたりまででだいぶん話が発散しており、原理的な問いかけがなされるだけでその解決は一切図られない、という非常にフラストレーションの溜まる状態に陥るわけですが、まあ要するに、そういう「病」の周辺事項に対して自覚を持つということが最も重要なことらしいので、そのつもりで読みましょう。
その後いろいろあって、最後は「ウェブ進化論」(梅田望夫)と「国家の品格」(藤原正彦)に対する批判、特にその節度の無さと自説を相対化する視線の欠如を指摘して、これが株式会社における「病」と同じタイプの問題を抱えている、というお話でシメとなります。
#まあ正直このあたりの批判はどうかと思いますが。
#特に「ウェブ進化論」に関しては、同様の批判が発売直後からたくさん出ていましたし、それに対する解決も各人の中で既になされてきたはず・・・ですよね?
さてさて、久しぶりに典型的な文明批評論(と呼んでいいのかな?)を読みました。
そんなに目新しいことが書いてあるわけでもありませんでしたが、非常に読みやすくわかりやすい文章で、ポイントをうまく整理し直した本になっているので、自分の頭を整理するのにはちょうどよいかと思います。
それにしても最近は内田樹といい平川克美といい、原理的な問いを誰にでもわかるように簡単にまとめ直した”整理本”がたくさん出ていますね(そしてこれがまたたくさん売れている)。
もはや柄谷行人や蓮實重彦のような小難しいことをグチグチ言うタイプの人の本なんか誰も読まないよ、ってことなのでしょう(笑
#僕も今さらそんなの読む元気無いしなあ。
サクッと読めるので、気になる方は気楽にどうぞ。
#おまけ#
平川克美氏のブログ:カフェ・ヒラカワ店主軽薄
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