先日は MIAUによるダビング10アンケート にご協力いただきありがとうございました。
昨日は夕方からシンポジウム「ダビング10について考える」に参加してきましたので、その報告と自分用のまとめとして以下にメモを載せておきます。なお、シンポジウムの内容については近いうちにネット上で公開される予定(YouTube & ニコニコ動画)なので、その際にはまた改めてお知らせいたします。
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そもそもダビング10とは、、、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%B010
ダビング10(「ダビングテン」と統一的に呼ぶ)とは、総務省の情報通信審議会で提案された、デジタル放送の私的利用に関する運用ルールに対して、電子情報技術産業協会(JEITA)が定めた統一呼称であり2007年12月20日に正式に公表された。またダビング10の機能表示や言葉の使い方はコピー9回+ムーブ1回(ダビング10)、ダビング10(コピー9回+ムーブ1回)、またはダビング10とすることが推奨されている。地デジ放送では2008年6月頃からダビング10に対応した放送が運用される予定。
で、昨日のシンポジウムの内容のまとめ。それぞれ話された順に。まずは「そもそも論」からスタート。
池田信夫(上武大学大学院教授)
CAS (Conditional Access System)について
有料放送につくのはわかる。世界でもやっている。無料放送にCASをつけるのは日本だけ。
もともとは有料放送に合わせてCASをつけていたが、客が集まらないのでズルズルと無料放送を続けている。
→初期投資を回収するためにB-CASをつけたとしか思えない。
B-CASに関しては説明・周知無し(マスコミ自体も利権者側なので報道しない)
国会の審議を通さず、一法人によって管理されている ←独占禁止法違反だ!
CAS、特に現在日本で採用されているB-CASとは
http://ja.wikipedia.org/wiki/B-CAS
B-CAS(ビーキャス)は、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(BS Conditional Access Systems Co.,Ltd.)の略称、もしくはこの会社が提供する限定受信方式(B-CAS方式)のことを指す。また、同機能を実現するために受信機に設置するカード(B-CASカード)のことを指す。
池田先生の講演は、非常に挑発的で刺激的なものでした。まっさらな頭で聞くと、池田先生の「そもそも論」はまさに正論。
が、現実的にはそうも言ってられない、というのが次の講演。
川村真紀子(主婦連合会)
そもそものはじまりについて:2005年7月からコピーワンスの見直しが開始(非公開)
→その後 EPN 対 コピーワンスルールのマイナーチェンジ の対立が2年間続く
(メディア:EPN 放送事業者&権利者:EPNは受け入れられない)
インテルが、最初のコピーをCOG (Copy Once Generation)ステイタスで書けばその次の世代のコピーはDTCPルールに関係なく可能であることを説明
→一気にダビング10へと流れる
根本的な問題は、放送事業者と権利者代表の委員が、EPNという選択肢を決して許さなかったこと
結局妥協案を採らざるを得なかった
EPNとは
http://ja.wikipedia.org/wiki/EPN
EPN(Encryption Plus Non-assertion)とは、デジタル放送コンテンツの著作権保護方式の提案のひとつで、電子情報技術産業協会(JEITA)が提案している「出力保護つきコピー無制限運用」のこと。
デジタルコンテンツを暗号化し、暗号化されたまま複製。暗号化を解く鍵を再生デバイス側に持たせることで、コピー技術に対する制限ではなく、再生制限による権利コントロールを行う。
DTCPとは
http://ja.wikipedia.org/wiki/DTCP#DTCP.EF.BC.88Digital_Transmission_Content_Protection.EF.BC.89
DTCP(Digital Transmission Content Protection)は、日立、インテル、松下電器産業、ソニー、東芝の5社が共同で開発し1998年に発表したデジタル伝送用のための暗号化技術。5社が開発したことから「5C(Five Company、ファイブ・シー)」などとも呼ばれる。IEEE 1394(Firewire・iLink)用のDTCP-1394やIP用のDTCP-IP(DLNAで使用されているのを確認)などがある。機器ごとにIDを持たせ、公開鍵暗号または共通鍵暗号を利用して相互認証し、双方でコンテンツ保護が行えると認識しあえて初めて録画・再生が可能になるシステム。認証出来るとレコーダー側に復号用のカギを持たせ、映像データなどを暗号化して送信する。CCI(Copy Control Information)によって「Copy Free」「Copy Once」「Copy No More」「Copy Never」の4つのモードを指定できる。また、SRM(System Renewability Message)により不正機器のリストを共有することができ、不正機器のみを排除することが可能。
川村さんは当事者としての意見なので、ややあきらめムードあり。ただし、、、
「2年間の膠着状態を解消するために妥協案を採らざるを得なかった。何もしなかったらコピーワンスが続いていたかもしれないから、それだけでも進歩したと見るべきかも。」
みたいな意見に関しては、完全に本末転倒。ダビング10の問題は今後のデジタル文化の問題を考える上での試金石であり、個別の問題として片付けてはいけないと思う。
で、次は問題の整理とユーザー側からの意見。順番的にはこちらが先の方が聞きやすかったかも。
増田和夫(オーディオ&ビジュアル評論家)
現行のコピーワンス:放送局→HDDレコーダーの一世代のみコピー可能。(複数のレコーダーでのコピーは可能)
ダビング10:放送局からコピーしたHDDを「放送局」にして、もう一つ次の世代にコピー可能。(ただし回数制限あり)
回数制限を設けるのは日本だけのローカルルール。
ダビング10の問題点
データをムーブするとコピー可能回数が0回になる。
アナログ出力は回数無制限でコピー可能。(そもそもの著作権保護方式が異なるので)
レコーダの操作画面が複雑になる。分割されたデータに関するコピー回数制限がどうなるかわからない。複雑な取説を再配布する必要。
→いずれにしても全てが煩雑になる。消費者の心証も悪い。
とにかくユーザーにとってもメーカーにとっても、デメリットだらけ。なんでこんなことをわざわざやるの?みんなやってるの?
ということで、先進国である米国ではどうなっているのか、次の講演。
小寺信良(AV機器評論家、コラムニスト)
米国の放送事情:無料放送は暗号化、コピーコントロール無し。一部の有料放送はあり。
そもそもひとつの番組の放送回数が多いなどの理由で、特定の番組を録画して見るという文化があまりない。
AmazonやAppleなどの番組ダウンロードサービスなど、細分化された再生権購入型サービスが多い。
うーん。状況が違いすぎて単純に比較はできないようですね。
この後短時間のパネルディスカッションがありましたが、その前にMIAUのアンケートのまとめを載せておきます。
MIAUアンケート結果より(中川譲)
受動的なTV視聴ではなく、短時間の能動的な視聴への志向。
PCを中心とした動画管理→コピー制限への反発
デジタルデバイスに対するリテラシーが高いにもかかわらず、ダビング10の認知度・理解度が低い。
こんな感じの講演でした。
以下、パネルディスカッションで出た話や、それと合わせて自分が感じたことをまとめます。
権利者側の異常なほどの反発の原因は?
なし崩し的に利権を失うのが怖い?初期投資回収の問題?
→ユーザーの立場で考えていないことが最大の問題。これは著作権保護期間延長問題などでも同じこと。
そもそも無限コピーなんて普通の人はやらないのだから、無制限コピーにしても問題はない。
逆に、大量にコピーをするような人は、どうせなんらかの手段でコピーするのだから意味がない。
煩雑化した分だけ、メーカーも消費者も困る。機器が普及しなくて権利者も困る。
ダビング10で権利者側のビジネスモデルが成り立つかどうかも不明。
→結局ダビング10は lose-lose になる可能性高い。なんでこんな馬鹿げたことをやるのだろう?
そもそも論を言うと、、、権利を機器で制御しようという発想自体が間違い。著作権そのもののリテラシー向上を図ることが必要なはず。世代を超えたデータの継承、録画の文化を守る、そうした発想も必要。
法律でガチガチに縛らないといけない文化ってそもそも何?広く行き渡らせることこそが文化の本質では?
→これはかぐやのハイビジョンカメラ映像非公開問題でも同じこと。
なんかほとんどメモの羅列になってしまいましたが、最後に僕自身も協力会員であるMIAUの立ち位置・存在意義について。
単に各問題に反発することではない。単にネットユーザーの民意を吸い上げてまとめることでもない。
著作権を含め、新しい権利や文化の考え方を議論・提案することこそ、MIAUの本質であるべきである。
こんな感じで、これからもMIAUの協力会員としてやれることをやれる範囲でやっていきたいと思います。
本ブログを読んでくださっているみなさん、世の中いろいろと難しいことがいっぱいで大変ですが、しっかり勉強してしっかり議論して、よりよい社会になるよう一緒にがんばっていきましょうね。
###追記###
池田先生がブログの中で昨日の講演内容に関するエントリを書かれています。
→ B-CASは独禁法違反である
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