下流社会 新たな階層集団の出現 三浦展(光文社新書)

読む必要無し。ただそのひと言を伝えるためにエントリを書きます。
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ずいぶん前にベストセラーになった新書ですが、いまさらながら文句をつけるためだけにエントリを書けるほどの駄本。劣悪な文系ベストセラー本の典型。データも解釈も主張も全てが最低レベル。ここまでひどいと、反面教師としてむしろ読む価値があるんじゃないかと思えてくるほどです。

まず何より致命的なのが、データの使用法。「少ないデータ」を「恣意的に解釈」し「結果を一般化」してしまうという、統計的な議論で最もやってはならないことを見事にやっちゃっています。

それから次に問題なのが、データの集め方。「欲しいデータを手に入れる」ために「その答えを導く質問」を行うという、最初からバイアスをつけまくった最悪なアンケートをやっちゃってます。

とにかくひどすぎる。

そしてこれだけひどい内容を読まされた後に、最後の最後のあとがきで著者からの言い訳が。

そもそも本書で紹介した私のアンケート調査は、サンプル数が少なく、統計学的有意性に乏しいことは認めざるを得ない。したがって、見出しに「?」が多いように、本書に書かれていることの多くは仮説である。

それ、あとがきじゃなくてまえがきに書けよ。イライラしながら最後まで読み終わったところで「これまでの議論はデタラメですよ。やーい、引っかかったー」みたいなのは本当にやめてほしい。しかも「仮説である」なんてかっこいいこと書いてるけど、実際には仮説とかいうレベルではなく、単に自分の言いたいことを言うためにデータを無理やり利用しているだけの、大学生のレポートレベルの議論しか出てこなかったし。

いや、ホントに反面教師として読まれるべき本かもしれませんね、これは。

それにしても、ベストセラーに味をしめて本書の第2弾を出しちゃうのだから恐れ入ります(著者に対しても出版社に対しても)。せっかく良書をたくさん世に送り出している光文社さんが、こんなくだらないベストセラー本で2匹目のドジョウを狙っちゃいけませんぜ。

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4 Comments

  1. TB有り難うございました。
    おっしゃられるように客観的な根拠はまったくない、思いつきだけのプレゼンの典型例ですね。パワポでそれらしくキャッチーにまとめて、形式的に数値で客観性があるかのように装う点など、まさにビジネス・ショーでの講演会を彷彿とさせます。

    勿論、それをうのみにする思考停止した方々がそういった傾向を助長させるのですが、それを普通のことにしてしまっている社会が何よりも怖いです。

  2. >alice-roomさん

    コメントありがとうございます。
    思考停止している社会の恐ろしさ、私も感じます。
    特に最近のマスコミと、それを無批判に受け入れている人たちを見ると情けなくなります。

    最近はネットを通して “主体的に” 情報を得る人たちも一方では増えてきていると思いますが、実はこの情報に対する感受性がさらに「格差」を広げる原因にもなっていて・・・。

    いずれの方向にも正のフィードバックがかかってしまう現状をなんとかしないことには、日本は今後ますます「悪い見本」としてのアメリカ型社会に近づいていってしまいそうですね。

  3. こんにちは。
    以前山田詠美の『ぼくは勉強ができない』でTBさせてもらいました。

    この本はまだ読んだことがないのですが、このエントリを読んで、連想した本があります。『買ってはいけない』です。(最近新しいのが書店にあった記憶がありますが、これは「初代」のことです)
    発売当時、高校生だったのですが、最初は内容を鵜呑みにしてしまったのですが、その後に出た『買ってはいけないは買ってはいけない』などの批判本を読んだりして、「ああ、すぐに内容を鵜呑みにしないで物事を多面的にみることが大切なんだ」と、反面教師的に勉強になった記憶があるので(笑)

    まあ、この本の批判本は出ていないのかも知れませんけれど。

  4. >mayさん

    コメントありがとうございます。

    「読書の本質は、”何を読むか”ではなく”何を読まないか”である」
    みたいな言葉を最近よく聞きます。
    物事を多面的に見ることはすごく大切なことですが、本書を読むとやっぱり「読んではいけない」本はこの世にたくさんあるんじゃないかと思ってします。。

    たまには反面教師もいいですが、反面教師にばっかり授業料を払うような学校じゃ困りますからね ;p

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