豊かさの精神病理 大平健(岩波新書)

「やさしさの精神病理」(大平健)の兄弟本。
ちなみにこちらがお兄さん(出版年が古い)です。
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基本的には「やさしさ〜」と同じ構成で、具体的な症例・エピソードをもとに現代のねじれた「豊かさ」について論じた新書です。
実際のエピソードとそれに対する解釈とが交互にバランスよく配されているので、非常にわかりやすく、また納得しやすい一冊だと思います。

ここでのキーワードは〈モノ語り〉。

個性・能力・健康・幸せ・生活・・・あらゆるものをモノによって達成しようとする患者たち。
しかしそれは、モノを介することで生々しい衝突を避けようとする現代人の”やさしさ”なのかもしれません。
そのために葛藤に対する抵抗力が落ちて、些細なことで悩み精神科を訪れる人が増えている、というのはやはり問題なのかもしれませんが・・・。

問題を表面だけ見て、あるいは1面だけを見て議論をするのではなく、その背景にある時代性を捉えながら精神病理を語る著者の態度には好感が持てます。

バブル期前後のモノ全盛期に書かれた本ですが、本書で取り上げられた症例とその解釈は、現代におけるひとつの精神病理に対する議論としても十分な鮮度を保っています。
「やさしさ〜」と合わせてぜひご一読ください。

オススメ本です。

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