2009年度の振り返り&2010年度のスタート

新年度のスタートということで、昨年度の振り返りと今年度の抱負等を書いておこうと思います。

まずは、ちょうど昨年度の実績報告書を書き上げたところなので、その報告書をもとに昨年度の研究成果のまとめを載せておきます。

研究実施状況

近年発見が相次いでいる太陽系外の巨大な地球型惑星(スーパーアース)について、その系の特徴が木星・土星の衛星系(ガリレオ衛星・タイタン)の特徴と類似している点に注目し、巨大ガス惑星周りの衛星形成についての研究を行った。また本研究では、原始星周りの周星円盤の特徴と巨大ガス惑星周りの周惑星円盤の特徴の類似性にも着目し、衛星形成環境についても新たな知見を示した。太陽系内の衛星系から太陽系外の地球型惑星を論じるというのは極めて独創的であり、そのアイデアについては複数の学会および研究会で発表を行った。

具体的な研究手法とその結果については、以下の通りである。

Canup & Ward (2002, 2006) を参考に周惑星円盤の進化モデルを定式化し、その計算コードを作成した。先行研究では考慮されていなかった、木星・土星の形成環境の違いも組み込まれたモデルになっている。さらに惑星形成モデルである Ida & Lin (2004, 2008) を参考に衛星形成モデルを作成し、その計算コードを作成した。微衛星集積による衛星の形成、周惑星円盤との相互作用による衛星の動径方向移動、および周惑星円盤内縁における衛星の捕獲や衛星同士の共鳴関係など、多くの物理過程が組み込まれたモデルになっている。
本研究では、過去のN体計算の結果をもとに半解析的な式を導くことで、短時間に大量のパラメータスタディを行うことが可能となった。これにより、衛星形成について初めて統計的な議論を行うことができるようになった点が、非常に重要である。

計算の結果、衛星形成環境の違いから、木星・土星の衛星系の特徴の違いが自然に説明されることが明らかになった。各衛星系における衛星の位置・個数・成分・内部構造など、ほぼ全ての特徴が再現された。また本研究によって示唆されたタイタンの内部構造が、実際に探査機カッシーニによって得られた最新データと調和的であったことも、特筆すべき点である。さらに本研究で直接は計算されていないが、土星のリング形成についても、先行研究のアイデアを支持する結果が得られている。
本研究の結果は、ガス惑星周りの衛星形成問題に対して決定的な解を与えたと言っても過言ではない。これらの成果については、査読論文を含む複数の論文および学会・研究会において発表を行った。

以上の成果は、太陽系やスーパーアース系の形成過程の違いにも重要な示唆を与えており、今後一般的な地球型惑星の形成・進化の議論が大きく進むことが期待される。また巨大ガス惑星周りに形成される周惑星円盤の特徴を議論することで、原始星周りに形成される円盤についても新たな知見が得られた。これは地球型惑星の形成環境を議論する上で非常に重要な結果である。

本研究で作成した計算コードは、多様な原始惑星系円盤における多様な惑星形成の研究に応用することが可能であり、来年度は一般的な地球型惑星の形成や進化について、より総合的・統一的な研究を行いたい。



昨年度は、論文もアクセプトされましたし、学会発表もいろんな場所で行いました。研究のアウトプットに関しても、充実した一年だったと思います。
以下に、実績報告書で報告した研究発表についてもまとめておきます。

論文:

① Takanori Sasaki, Glen R. Stewart & Shigeru Ida, Origin of the Different Architectures of the Jovian and Saturnian Satellite Systems, The Astrophysical Journal, in press

② Takanori Sasaki, Shigeru Ida & Glen R. Stewart, Origin of a Difference between Jovian and Saturnian Satellite Systems, Exoplanets and Disks: Their Formation and Diversity, 263-264, 2009

学会発表:

① 佐々木貴教, 井田茂 & Glen R. Stewart, 木星衛星系と土星衛星系の作り分け, 日本地球惑星科学連合2009年大会, 幕張メッセ国際会議場, 2009年5月(口頭)

② 佐々木貴教, 井田茂 & Glen R. Stewart, 巨大惑星周りの衛星系形成とその多様性の起源, 日本惑星科学会2009年秋季講演会, 東京大学, 2009年9月(口頭)

③ Takanori Sasaki, Shigeru Ida & Glen R. Stewart, Origin of the Different Architectures of the Jovian and Saturnian Satellite Systems, 41st Annual Meeting of the AAS Division for Planetary Sciences, Puerto Rico, USA, 2009年10月(口頭)

④ Takanori Sasaki, Shigeru Ida & Glen R. Stewart, Formation of satellite systems in a circum-planetary disk around gas giant planet, The 11th Symposium on Planetary Science, 東北大学, 2010年3月(口頭)

プエルトリコに行ったのとか、懐かしいですね〜。久しぶりの英語の口頭発表でドキドキでしたが、楽しい国際会議でした。

今年度もたぶんあちこち行くことになると思います。まずは6月の石垣島と7月のインドが直近の国際会議です。
英語力もさらに高めて、もっともっと国際会議を楽しめるようになりたいです。


sakura

今年度は学振PDの3年目、最後の年度になります。

なんだかあっという間に東工大での2年間が過ぎてしまいましたが、研究者としてとても実りの多い2年間でもありました。最後の1年間は、いま頭の中にあるアイデアをどんどん形にしていき、この2年間で得たものを世界中の研究者や社会の人々と共有していけるよう、しっかりがんばっていこうと思います。

このブログでも、研究関係のアウトプットをたくさんしていけたらいいなと思います。

今年度も、Sasaki Takanori Online をよろしくお願いします。

2 Comments

  1. こんにちは。

    2009年度も終わり、4月で2010年度に突入ですね。

    今年こそは景気も回復し、公私ともに充実した
    良い年になればと思います。

    至らぬ点もありますが、陰ながらも応援させて
    もらえばと思います。本年度もよろしくお願いいたします。

  2. >Happy-lifeさん

    いつもコメントありがとうございます。

    今年度はまたぼちぼちブログの更新頻度を上げていこうと思っています。
    どうぞよろしくお願いします。

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