なんとも不思議な物語です。
アル中で鬱持ちの妻と、ホモで恋人持ちの夫。
そのふたりを取り囲むちょっと変わった人々。
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どう考えても非現実的な設定で奇妙な関係が描かれていくのですが、その世界にすんなり入り込めてしまう(そして非現実的な気がしなくなってくる)ところが、江國さんのうまさなのでしょうか。
いろんな形の愛の物語を、普通の恋愛小説として読み進めることができます。
さらに江國さんのにくいところは、あとがきで
「ごく基本的な恋愛小説を書こうと思いました。」
と書いてしまうところ。
どう考えても「ごく基本的な恋愛小説」では無いのですが、この一文を読んだ瞬間に
「ああやっぱりこれは普通の恋愛小説だったんだ」
と半ば強制的に納得させられてしまいます。
江國さんの作品では、自然に書いているようで実は緻密な文章構成を持っている、というところにいつもうならされますが、あとがきも含め全てにおいて意識的な無造作(「悪の〜」シリーズみたいになってきたぞ)に貫かれているあたり、改めて「大人」の作家さんですね。
やり方がうまい。
敏感な人はこのわざとらしさが気にくわないこともあるでしょうが。
さて、ところでこの作品の妻(笑子)は江國さんお得意の「狂気」によって描かれているわけですが、「神様のボート」での狂気の描き方と比べると、なんというか、ちょっとまだ筆力が足りないような気がしました。
「静かな狂気」にまで昇華しきれず、生々しいというかリアルな描き方になってしまっている分、やや読んでいて苦しいところが多かったように思えます。
まあこのあたりは、どの程度のリアルさに最も敏感に反応するか、という読者側の問題にもなってくるのでしょうけど・・・。
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トラックバックありがとうございます。
同じ時期に同じものを手にし、それぞれ思う。
なんだか不思議で面白いことです。
こちらからのトラバは載せられないようですので御礼まで。
>キヨさま
コメントありがとうございます。
僕も同じ時期に同じ本を読んだ人たちがどのような感想を持ったのか、それをこのブログの読者さんたちが比較されるのも面白いかな、と思って必ず読書日記には「他の人の記事」へのリンクを張るようにしてみました。
全く正反対のことを書いている人も結構多くて、なかなか興味深いです。
よかったらまた遊びに来てください♪