周惑星円盤内での微衛星形成の困難

従来の周惑星円盤での衛星形成モデルでは、ダストが周惑星円盤に供給された後、微衛星として成長することが前提とされてきたが、その具体的な過程や物理的条件については未解明の部分が多かった。本研究では、周惑星円盤の構造を一次元モデルで表現し、ダストが円盤内を移動しながら衝突成長する様子を数値的に解析した。その際、円盤へのガスとダストの供給率、乱流の強度、円盤内の温度分布などのパラメータを調整しながら、ダストの成長と移動の詳細を評価した。

モデル計算の結果、ダストが微衛星へと成長するためには、円盤内でのダストの密度が高く、乱流の強度が十分に低いことが必要であることが示された。具体的には、ダストとガスの供給率の比率が1以上であり、乱流パラメータαが10^-4以下である場合に、ダストは数キロメートルサイズの微衛星へ成長する可能性があることが分かった。しかし、現実的には、周惑星円盤におけるダストとガスの供給率の比率が1以上となる条件は非常に限定的であり、この条件を満たすには特定のシナリオが必要であると考えられる。また、乱流が強い場合、ダスト同士の相対速度が増加し、衝突時に破壊が起こる可能性が高くなるため、微衛星の形成自体が難しくなる。

さらに、乱流による影響だけでなく、ダストが円盤内で動径方向に移動する際のドリフト障壁も、微衛星の形成における重要な制約となることが示された。この障壁を乗り越えるためには、ダストが十分に大きく成長し、ガスとの相互作用によるドリフト速度が減少する必要がある。

各パラメータに対する数値計算結果。ほとんどのパラメータ領域で微衛星形成が困難であることがわかる。

*詳細はこちら*
Shibaike, Okuzumi, Sasaki & Ida, Satellitesimal Formation via Collisional Dust Growth in Steady Circumplanetary Disks, The Astrophysical Journal846, 81(10pp) (2017) [pdf]

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