フューチャリスト宣言 梅田望夫・茂木健一郎(ちくま新書)

「ウェブ人間論」(梅田望夫・平野啓一郎)に続き、今回は茂木さん相手の梅田対談。
ネット世界における輝かしい未来創造の魅力と可能性が語り倒されます。
[tmkm-amazon]4480063617[/tmkm-amazon]

本書の場合は、基本的には新しい未来への強い期待感が共有される形で対談が続いていきます。
この辺りが、互いに異なる視点や展望をもとに熱い議論を戦わせていた「ウェブ人間論」とはかなり異なっているところでしょう。

ただ残念ながら本対談では、未来が共有されている分、気持ちよく読み進めることはできますが、一方で脳を揺さぶられるような体験がほとんど無いという、なんとも中途半端な結果に終わっています。
これでは「対談」という形式は完全に失敗していると言わざるを得ないでしょう。

たぶん、問題は、茂木さん。

はっきり言います。
彼は基本的にその場の思いつきでしゃべっています。
特に信念があるわけでもなく、その場のノリでなんとなく思ったことをそのまましゃべってるだけです。

・・・言い過ぎでしょうか。
ちょっと言い直すと、彼は思いつきでしゃべっている、と僕は思います。

梅田さんの話にひとまずうなずき、その視線に沿った形で(その場で作り上げた)自説を展開しているように思えて仕方ないのです。
だからどうも議論がふくらまない。
表面的な共感に終わってしまう。

茂木さんは非常に頭が良い人なので、きっとその場でサッとそういうことができちゃうのでしょう。
ただ、頭が良く発想力も豊かな人なので、思いつきでもすごく良いことを言う場合が多々あるんです。
そこがまたやっかいなところなんですが。

各種メディアへの露出も激しく、とんでもなく忙しい毎日を送る中で、その場その場で当意即妙なやりとりをする能力がさらに磨かれてしまったのでしょうか。(穿ち過ぎか?)

もちろんこれらは僕の勝手な解釈なのかもしれませんし、人によっては茂木さんの思考の核のようなものを感じている場合もあるかもしれません。

それでもやはり僕は、茂木さんにはもっとゆっくり時間をかけて物事を突き詰めてもらいたい、と思うんです。
あれだけ圧倒的に頭が良い人なのだから、もっともっと深い議論をやってくれてもいいと思うんですよね。

もちろん茂木さん自身が本書の中で述べているように

「原理的に突き詰めるアインシュタインよりも、総合的な見地に立つダーウィンになりたい」

という思想のもとで、敢えて「あらゆること」に手を出して自らを多忙な状態に追い込んでいるのだとしたら、それはもう僕には文句をつけることはできないのですが・・。

どんどん本の内容から話がズレてますが、中身うんぬんよりも、茂木さんのサイエンティストとしての立ち位置や哲学の方に意識が引っ張られたので、ぐだぐだと書いてしまいました。

茂木さんは、たまにドキッとするようなことを書いたり話したりされる方なので、いつもなんだかんだと批判しながらも、結構注目している研究者のひとりでもあります。
彼の他の著作をもう少し読んでから、改めて茂木健一郎という研究者の全体像を眺め直してみたいと思います。

☆他の人の記事も読む☆
街中の案山子
航海日誌

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.




CAPTCHA