ウェブ人間論 梅田望夫・平野啓一郎(新潮新書)

「ウェブ進化論」の著者梅田望夫さんと「葬送」などで有名な芥川賞受賞作家平野啓一郎さんによる、ウェブ進化についての対談集です。
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大きな時代の変わり目の中で、社会はどう変わろうとしているのか、個人はどう変容すべきなのか、といった大きなテーマの解題へ向けて、その変化の本質と未来を徹底的に語り尽くします。

「ウェブ進化をめぐる対談は、東京で二度に分けて行われたが、それぞれ延々ぶっ続けで八時間以上にも及んだ。午後四時に話し始めて深夜零時をまわるまで、どちらかがしゃべっていない時間はほとんどなかった」

という言葉通り、非常に熱い対談になっています。

基本的には、平野さんが経験や具体例をもとにウェブ2.0時代への疑問点を投げかけ、それを梅田さんが持ち前の楽観的展望を展開することで共通の未来を夢見ていく、という形になっています。
ちょうど一般読者の疑問を平野さんが代弁してくれ、専門家の考え方を梅田さんが代弁してくれるので、とてもバランスの取れたよい対談でした。

また、互いに相手の意見に呑み込まれることなく、しっかりと考え方の違いを明確にした状態で議論を進めており、対談集でありがちな「なれあい対談」になっていないところも好感触。

これだけ良質な対談集はなかなか無いと思います。
ウェブうんぬんは抜きにして、良い対談の例として読まれるのもありかもしれませんね。

さて、本書中で最も意外だったのは、「本の未来」についての考え方。
作家である平野さんの方がネガティブな考え(=ウェブの未来へのポジティブな考え)を持っていて、梅田さんがそれをたしなめる、というやりとりになっているのです。

平野「出版社から直にデータだけ買って必要な箇所だけ自分で製本して読むという時代もくるのではないかと思うんです(後略)」

梅田「実は、僕はあまりそう思ってないんです。本が「永遠に不滅」かどうかは難しいけれど、相当長く生き残るメディアだと思います(後略)」

平野「でも、本に対してフェティシズムがないなら、データのやり取りで十分なんじゃないかと思うんです」

梅田「(前略)人々が本というメディアに慣れ親しんできた経験の蓄積というのは本当に大きいものなんだなと痛感しました」

平野「(前略)今の電子書籍がなかなか売れないのは、やはり端末が悪いからで、これから可能性が上がってきて、世代が入れ替われば当然読書の方法は変わってくるんじゃないですかね?」

といった感じです。
ね、なかなか興味深いやりとりでしょ?

他にも刺激的な問題提起がたくさんあるので、気になった方はどうぞ手に取られてみてください♪

#おまけ#
梅田望夫氏のブログ:My Life Between Silicon Valley and Japan
平野啓一郎氏のブログ:平野啓一郎公式ブログ

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naosanの前進日記
うちあたい

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