博論と修論、論文の値段。

なんかバタバタしてるうちに、気づいたら5日間もブログを書いていなかった。最近は自分の博論の仕上げと後輩の修論の仕上げ(=発表練習)の毎日です。本もいろいろ読んでるので、明日からまた読書日記も再開します。


さて、修論と博論について。うちの指導教官さまのありがたいお言葉集より。

修論は一品料理。オードブルでもメインディッシュでもデザートでも何でもよい。和食でも中華でも洋食でも何でもよい。とにかく一品きちんと作って、美味しく食べることができればOK。

博論はフルコース。オードブル〜メインディッシュ〜デザートまで一通りそろえる必要がある。和食なら和食、中華なら中華、洋食なら洋食で統一。コース全体としてバランスよく美味しく仕上がっていなければならない。

ちなみに僕の修論はほとんど創作料理でした。惑星科学が専門なのに修論のタイトルは「Numerical experiments on variation of species diversity in size-dependent evolutionary system(サイズ依存性のある進化システムにおける生物種の多様性変動の数値実験)」という全く異なる分野の研究。これは一品料理を提供する修論としては、意外と正解というか楽な選択だったかなと思います。とにかく全く新しい料理を創作したものなので、余計なことは考えずにとにかくその一品を美味しくすることにエネルギーを注げばよかったから。
逆に、フルコースの形が頭に浮かんでしまうような内容の修論は、修論なりの難しさが出てきます。そのオードブルはフレンチには合わないよ、とか、メインディッシュだけ出されても胸焼けする、とか。その一品が美味しければ良い、とは言ったものの、やはり客としては全体のコースの中でどのようにその一品が使われるのかを考えながら食べるもの。だから実は一品料理を出すことはそんなに簡単ではないのです。

なお博論は、最初からフルコースの全体像を頭に描きながら作っていくから、あまり難しいことを考えなくてもいいのである意味では楽です。ちゃんと一通り出してあげれば、客はそれなりに満足してくれるし。別にミシュラン三つ星の料理じゃなくてもいいわけで、それなりに考えて作ればなんとかなんるんですよね。だから実はそんなに難しくない。(手間はかかるけど。メインディッシュがちょっと大変だけど。デザートとかはセンス問われるけど。って、やっぱり結構大変なのかな 笑)

まあ要は、修論は修論なりの難しさがあって、博論は博論なりの難しさがあって、みんな大変なんだけど、みんな大変なんだから、みんながんばろうね、ってこと。来週は修論発表会だね。悔いの残らないようにあとちょっと、がんばってね。


もひとつ、全く別の話題。「東大の論文、1本1845万円 国立大でコスト最大級」というasahi.comの記事より。

内容を全文引用はしませんが、簡単に言うと「東大はコストパフォーマンスが悪い」「少ない研究費でたくさん成果を上げている大学にもっと研究費を配分せよ」という感じの論調になってます。
でも、、この指摘はたぶんポイントがズレてると思います。僕は逆に「研究費をたくさんもらっている東大だからこそ、コストパフォーマンスの悪い研究ができる」のだと思っています。

必ずしも「料理の美味しさ」が「値段」に比例するわけではありません。食材がべらぼうに高いことで値段がべらぼうに高くなることがあります。高級食材はえてして「美味しさ」に対するコストパフォーマンスが悪い。(「珍味」とか呼ばれる食材に関してはさらにそれが顕著になりますね。)でも、その料理は誰かが作らないといけない。例えコストパフォーマンスが悪いと分かっていても、それを気にせずに作れる人がどこかにいてくれないと、困る。

べらぼうに金持ちだからやれる研究ってのは絶対にあるし、東大はそういう研究をやる(やれる)大学であるべきだし、ピントのずれた「平等」の発想はたぶんやめた方がよいと思う。
もちろん、金銭的に恵まれているせいで全体的に危機感が無くなっててハングリーな雰囲気も無くなってて、グズグズ・グダグダ・ズブズブになっていくのは、それはそれで問題なのかもしれないけど。でもまあ、腐って発酵して美味しくなることもあるしねー。
・・・というのは冗談だけど。とにかく、多様な大学が存在して多様な方法で多様な研究がなされていくことが一番重要なわけで、東大にはこれからも「お金持ち大学」であり続けてほしいと思います。

なんかとりとめのない話になりましたが、とにかくみんなそれぞれの立場・それぞれの方法で、自分にしかできない研究をしっかりやっていける、そんな研究環境がもっとちゃんと整っていくといいなあ、と考えたりしてるところです。

3 Comments

  1. Sasakiさん、こんにちは。
    Sasakiさんの文章は、難しそうなことをシンプルにして
    楽しくおいしく味付けられて・・おいしくわかってしまうという
    満足感があります。
    きっと、作り手がその料理づくりを楽しんでいることが
    ・・深みのひとつのエッセンスかもしれませんね。

  2. >こころんさん

    確かに料理づくりは楽しんでるかも o(^-^)o
    研究もブログも、楽しくやらなきゃね♪

    こころんさんのように、いつもブログを読んでくれてる人がいると思うと、料理にも気合いが入ります。
    #そして愛がこもります (*^^*)
    いつもありがとう。

  3. 2chで見つけたデータなので信憑性はないですが、あと分野別の評価でないので具体的にどこがいいのか分かりませんが・・・

    <研究コストパフォーマンスランキング>
    同じ予算でどれだけの実績があげられるか?まあ車の『燃費』のようなものと考えてください。
    Aaa:該当なし
    Aa :金沢 76.9 大阪大* 74.1信州 71.3
    A :群馬 67.9筑波 67.7 京都大* 66.6三重 66.2 九州大* 66.0 岐阜 65.8山口 64.4神戸 63.8千葉 62.4
    Baa:徳島 58.7鳥取 58.4 名古屋大*58.1 熊本 56.7岡山 55.4愛媛 54.8 東京大* 54.5 長崎 54.3広島 54.1新潟 53.9鹿児島 53.2
    Ba :東北大* 46.8 山形 44.0 北海道大*42.4 弘前大 40.3
    (旧帝大には*印を付しました。)
    注:ISI社のデータベースから得た研究業績から各大学の補助金額に対する論文生産性をランキングしました。
    評価方法としては論文数と引用度の積をその大学の実績とし、科研費で割って研究コストパフォーマンスを算出しました。

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