最後の記憶 綾辻行人(角川文庫)

死ぬ直前、人生最後の記憶は何になるのだろうか。進行性の痴呆に冒されたとき、最後まで強固に残る記憶(こちらも「人生最後の記憶」と呼べるでしょう)は何になるのだろうか。想像するだに恐ろしいテーマですが、そこをホラー調・ミステリ風に仕上げてしまうのところはいかにも綾辻流。さすがと言っておきましょう。[tmkm-amazon]404385501X[/tmkm-amazon]

#本書はある種のミステリなので、以下では内容については触れません

ただ、作品の完成度については・・・。
正直「綾辻どうした!?」と言いたくなるほどの駄作でした。解説では、既存の小説の枠組みに囚われない挑戦的な試み、だとか、綾辻にとってこれまでで最も冒険的な一冊、だとか言ってなんとか本書を評価しようとがんばっていますが、僕には単純に駄作としか思えません。アマゾンのレビューを見る限り評価が真っ二つに分かれているようなので、綾辻の新境地としてあたたかく受け入れている人たちも一方では多いのかもしれませんが。。

本作品が本当に「挑戦的な試み」であり「冒険」であったのならば、ぜひ次回作では一皮むけた本物の「新境地」を見せていただきたいものです。綾辻はもはや過去の作家なのか、それともまだ文壇のトップを走る革命児的作家であり続けているのか、次の作品がひとつの大きな指標を与えてくれることでしょう。
#ちなみに本書はもともと2002年に単行本として出版されたものですが、それ以降同じタイプの小説を綾辻は未だ書いて(書けて)いません。

「十角館」にはじまり「殺人鬼」「眼球綺譚」「霧越邸」など、これまで様々なジャンルの作品を非常に高いレベルで書き続けてきた綾辻だけに、今回の失敗(と敢えて書いてしまいます)は、次回作への期待と不安を大きく煽る結果となりました。

綾辻行人さま、次回作を楽しみにしています。新しい綾辻の世界に我々を連れて行ってくれること、心より期待しています。ぜひまた、素晴らしい作品を華麗にご披露ください。

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クキザン日記

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