玄田英典@システムセミナー

個人的なメモです。

「惑星形成論から見た地球型惑星の大気と海の起源について」

地球になぜ生命が発生し進化したのか?
 直接的かつ科学的に解明するのは困難
  実験室で生命までは作れない
  サンプルが地球ひとつしかない(サイエンスの定義問題?) ←近い将来サンプル増える?

 → 十分条件ではないが、必要条件として、海や大気の存在を議論
 → 地球型惑星の大気・海の起源の解明
 その他:サイズ、磁場、自転軸などなどいろいろある

1995.10:Mayor & Queloz のペガサス座51番星
 その後 Jeff Marcy が半分近くの系外惑星を発見

2006年末 フランス Corot
2008年 アメリカ Kepler
2015-2020 ヨーロッパ Darwin アメリカ TPF-C, TPF-I → 大気スペクトル観測(オゾンや葉緑素がバイオマーカーとなる?)

 → 10-20年後には大気成分から生命の存在を予測できるようになるかもしれない!

・大気・海がいつできたのか?

海の地質学的な証拠
 イスア地方(グリーンランド南西部)の地層に最古(38億年前)の堆積岩・枕状溶岩
  → 少なくとも38億年前には海が存在

初期大規模脱ガスの証拠 Hamano & Ozima 1978
 40K→40Ar 半減期13億年
 現在のマントルの40Ar/36Arは大気の値よりもはるかに大きい
  → 大気中のArの80%以上が、地球形成後数億年以内に脱ガスした
  → 大気は初期に大規模脱ガスによって形成

以上の初期大気・海洋は、形成論の立場からも cosistent (初期の重爆撃など)

・惑星形成の現代的描像

原始惑星系円盤 → 微惑星 → 原始惑星 → できあがり
      微惑星形成  暴走成長  巨大天体衝突

理論はあるが、直接的に知っているのは最終状態(今の太陽系)と惑星系円盤(観測)のみ
 → アメリカの Spitzer によって円盤中のムラを観測しようとしている
   ALMAが完成すれば中間状態も見えるはず

問題1:ネビュラガスの散逸タイミング 未だによく分からん、原始惑星ができるステージあたりまでは存在してたはず
問題2:離心率を落とすメカニズム ガスでなだめるか 微惑星でなだめるか 後者はガス惑星が早く形成することが重要?

・大気・海の起源物質

起源物質:コンドライト隕石(外側の材料物質)、彗星、円盤ガス、(地球を作った微惑星(内側の材料物質):町田D論)

大気と起源物質との比較(図:玄田D論)
 希ガス存在パターン:CCと類似してるが、、地球のXeが枯渇、Ne同位体が異なる
           太陽組成とは異なる *実はcometと類似(ただし観測ではなく低温実験)→ missing Xe も解ける!?
  → 太陽組成から軽めの元素を飛ばせば合うかも?散逸を考える必要

海と起源物質のD/H比較 Drake & Righter 2002
 地球の海の起源は:CC的な水 or 彗星とネビュラ由来の水の混合 

最近の研究:海のD/Hは水素を多く含む原始大気が散逸することで数倍上昇 Genda & Ikoma 2006, submitted to Icarus
 H2-H2O の間のD交換によって水分子にDが濃縮
 水素散逸時の質量分別(散逸のタイムスケールによってD/H上昇率が変わる ゆっくり散逸した方がより上昇)
  の2つの方法でD/Hを上げることが可能

まとめると・・・    希ガスパターン   D/H
 コンドライト隕石    ○ or △     ○ or △
 彗星           △       ×     ← 希ガスについては低温実験を詳細にやれば○になるかも?
 円盤ガス        ×(or △)    △

*希ガス問題:Pepin の最近のレビュー論文@EPSL

・地球型惑星への供給プロセス

1. 惑星形成中の微惑星衝突脱ガス
 Lange & Ahrens 1982 Matsui & Abe 1986 Abe & Matsui 1986 Zahnle et al. 1988

 2km/s(月ぐらい)で脱ガス開始、4km/s(火星ぐらい)で完全脱ガス Tyburczy et al. 1986

2. レイトベニア
 Owen et al. 1992 Ahrens 1990 Morbidelli et al. 2000 Gomes et al. 2005

 地球がほぼできた段階で、コンドライト隕石や彗星が少量集積する
  大気・海は地球質量と比べたら微々たるものなので最後にふりかければいい
  そもそもそれ以前のものは巨大天体衝突で失われる Ahrens 1990

 飛んでくるメカニズム:
  木星による小惑星帯への重力的な散乱 Morbidelli
  天王星・海王星の移動による氷微惑星の散乱 Gomes

  → 実際には巨大天体衝突で、相当量の大気が生き残る Genda & Abe 2003
    海が存在している場合は少し様相が変わる Genda & Abe 2005

3. 円盤ガス捕獲
 Hayashi Mizuno Sasaki Genda & Ikoma などなど

 惑星が月サイズ程度になると円盤ガスを重力的に捕獲し始める
  → 坂本M論

・惑星形成論から見た、大気・海の形成

いろんなシナリオが考えられるが、定量的に決定することはまだ難しい(希ガス問題がネック)

・大気・海形成に関わる重要課題

 Snow Line の位置・進化
 離心率を下げる方法:円盤ガス Kominami & Ida 2002 微惑星 O’brien 2006

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