7月7日号の科学雑誌 Science になんとも不思議な論文が載っていました。
音楽の和音を、幾何学空間内での位置関係を用いて表現した、という論文です。
Dimitri Tymoczko, The Geometry of Musical Chords
Science, 313, 72-74 (2006)
この論文では、和音と旋律を数学的空間中の点と線として捉える「orbifold」と呼ばれる新しいアプローチがなされています。
著者はこの手法を用いて、私たちがどのような和声を快いと感じるかという問題に対して、数学的な解釈を与えることに成功したというのです。
著者が注目したのは、クラシック音楽の重要な作曲技法である和声(2種類あるいはそれ以上の音をまとめて1つの和音を作り出すこと)と対位法(複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ調和させて重ね合わせる技法)です。
著者は、和音が有効かつ心地よい響きを生み出すよう連結されるか否かの「規則」は、幾何学的空間における和音間の連結を地図に表すこと、また和声と対位法がどれくらい正確に関係しているかを表すことによって、数学的に表現することが可能であることを証明しました。
そしてさらに、作曲者は「空間」を探求することによって新しい音楽を作り出すことができるだろう(そして実際にそうしているはずだ)と述べています。
すなわち、数学的に美しい和音を作り出すための解空間を求めれば、その「空間」を音楽に変換することで素晴らしい音楽を作曲することが可能であると言っているのです。
科学的には計り知れない(とみんな思い込んでいる)「感性」を数学的に記述してしまうなんて、なんとも恐ろしい論文です。
次は無調・12音音楽の美しさについても論じてもらいたいところですね。
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