性格も背景も環境も全く違う4人の男女の「失恋」を描いた短編集。
ただしどれも一般的な「失恋小説」からは少しはずれた物語ばかりなので、人によっては「どこに失恋が描かれているの?」と首をかしげることになるかもしれません。
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恋や愛なんて所詮は自分勝手な欲望を満たすためのマスターベーションに過ぎないのか、という普遍的な問いに頭を悩ます「欲望」。
水商売をしている女の孤独と無力感を、冬空とタクシー運転手を背景に描く「安い涙」。
優柔不断でどうしようもない男に、どうしようもない男であるが故になぜか引き寄せられてしまう女たちを描いた「記憶」。
そしてちょっとしたトリックを仕掛け、最後にすっきりと本書を締める短編「遅刻」。
それぞれに味わい深い素敵な短編ばかりです。
江國香織さんの短編に雰囲気が近いところもありますが、もう少し積極的に(わかりやすい)状況設定を行っているので、より容易にその世界に入り込めると思います。
普通の失恋小説なんて読み飽きたという方、本書を読んでみられてはいかかでしょうか。
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Nothing is what is seems.
日々の読書記録をつれづれに。
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