包帯クラブ 天童荒太(ちくまプリマー新書)

ちくまプリマー新書が登場したときからずっと気になっていて、でもいつか読もうと思っているうちに映画化されて人気が出ちゃって、そしたらいつものあまのじゃくな性格で逆に読みたくなくなって、でもやっぱり気になっていたから最後はブックオフで見つけて買って、それでもなんか悔しくてなかなか読み始められなくて、、、[tmkm-amazon]4480687319[/tmkm-amazon]

ということで、ようやく読みました。もっと早く読んでおけばよかった、と思えるほどいい本でした。(教訓:読まず嫌いはやめましょう)


包帯クラブの活動内容は「誰かが傷ついた場所に包帯を巻く」ただそれだけ。ただそれだけの行為ですが、これがびっくりするくらい心に効きます。本の中でいろんな「傷ついた場所」に包帯が巻かれていくのを読むと、まるで自分の心も一緒になって癒されていくよう。なんだかよくわからないけど、涙がぽろぽろこぼれてきます。

それにしても、そもそも私たちはいつから「癒される」ことをこれほどまでに必要とし始めたのでしょうね。「傷つくこと」を極端に恐れるようになったのは一体いつからでしょう?

昔はきっともっと「戦っていた」はずです。傷つくことを恐れずに、大切なものを守るために、必死で。安保闘争時の若者たちだって、「ぼくらの七日間戦争」のこどもたちだって、81年「金八先生」の加藤・松浦だって、みんな戦っていました。

でも「包帯クラブ」を結成したワラやタンシオたちは、戦うことを放棄し、ただひたすら傷口に包帯を巻くことを選択します。

わたしのなかから、いろいろ大切なものが失われている。 / (中略) / わたしと、わたしの仲間はそれに気づいて、戦うことにした……いや、違う。 / 大切なものを守ろうとして、懸命に戦っているつもりでいると、いつのまにか、別の大切な部分が失われている。苦い経験から、それを学んだ。 / これは、戦わないかたちで、自分たちの大切なものを守ることにした、世界の片隅の、ある小さなクラブの記録であり、途中報告書だ。(「包帯クラブ」冒頭より)

なんという諦観。高校生にしてすでに、戦うことの無意味さ(安保闘争も七日間戦争も金八も結局は「戦いに負けた」のだ)に気づいてしまうほどの「苦い経験」をせざるを得ない現代の日本。胸がつまります。

この本を読んで「なんだかよくわからないけど、涙がぽろぽろこぼれて」しまった僕自身も、どこかでこの諦観を受け入れて大人になってきたのでしょう。この本は、そんな僕の「傷」に光をあて、包帯を巻いてくれた。だから自然と涙がこぼれたのだと思います。(ということは「癒された」というよりも「許された」という方が感覚に合っているでしょうか)

大切なものを守ろうとして戦ってきたけれど、結局は大切なものをたくさん失ってしまった、そんなあなたに。この包帯はきっと効きますよ。

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2 Comments

  1. いつも楽しく拝見しています。
    ささきさんの読書日記から、珠玉の本たちとの出会いがありました。
    ささきさんの感想は、心のどこか深いところ(柔らかい場所)に
    響きます。
    これからも、楽しみにしています。
    遅ればせながら・・星に興味が湧いてきました。
    星のお話も聞かせてくださいね・・。

  2. >こころんさん

    コメントありがとうございます!
    こころんさんって、以前にもコメントくださった、あのこころんさん、、ですよね!?きっと。

    続けてブログを読んでくださって、ありがとうございます!
    僕は相変わらず行き当たりばったりの節操のない読書をしてますが(笑)こころんさんと素敵な本との出会いを少しでも橋渡しできていたら、すごく嬉しいです。

    星のお話もときどき書きたいなあとは思うのですが、完全に自分の専門の話になるので、逆に身構えてしまってなかなか書けずにいます。。
    一応「研究者のブログ」ということになってるので、専門のネタをもう少し扱いたいところなんですけどねえ。

    実はそのあたりは今いろいろ検討中なんです。
    無事に卒業できたら4月からは研究員として大学を移ることになるので、それを機にブログの利用法を少し見直すことを考えています。

    まあいずれにしても、本を読むのは大好きなので、どんな形であれ読書日記はこれからも書き続けていくので、どうぞ今後ともよろしくお願いしますね!

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