今年のノーベル平和賞は、国際原子力機関(IAEA)とエルバラダイ事務局長が受賞した。
広島・長崎の原爆投下から60年、世界中がテロの恐怖に脅えている今日、このノーベル平和賞は我々に改めて核拡散防止の重要性を訴えかけている。
そもそも IAEA は 核拡散防止条約(NPT)の遵守を徹底させる目的で組織された機関である。
しかし、近年はその目的を完全に果たせているかというと、実はかなりの問題を抱えており、とてもノーベル平和賞を受賞できるような実績を上げているとは言い難い。
相次ぐ査察拒否。
アメリカの不条理なイラク戦争に対する発言力の弱さ。
なかなか解決へと向かわないイラン・北朝鮮の核問題。
最近では、IAEA の存在意義がしだいに失われてきている感さえある。
また、冷戦時代の2国対立における核兵器使用の危機が地球規模の極めて大きな問題であったのに対し、現在の小国あるいはテロリストへの核拡散が、見かけ上その問題を小さく見せてしまっていることも、IAEA の存在意義を薄めている原因かもしれない。
今回の IAEA とエルバラダイ事務局長へのノーベル平和賞の授与は、近年急速に広がりつつある核拡散に対する警鐘であるとともに、力を失いつつある IAEA へのある種のカンフル剤でもあったのだろう。
IAEA の今後の一層の奮起に期待したい。
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