いやぁ、これはすごい。早くも2008年ベスト本の筆頭候補になりそうな素晴らしい作品。
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図らずも人生を”リプレイ”することになったら、それも最初からではなく人生のある地点からリプレイすることになったら、あなたはその”もうひとつの人生”をどう過ごしますか?全く新しい生き方を選択する?やり残したことを片っ端からやる?”結果”の分かっている賭けで大儲けする?
・・・とまあいろいろと妄想はふくらみますが、ここまでならみんな一度は考えてみたことがあることでしょう。
では、その人生が終わった後でもう一度人生のどこかからリプレイすることになったら?さらに再度、再再度、強制的にリプレイさせられたら?何度人生を構築しても、また途中からやり直し。いくら素晴らしい人生を送っても、いずれご破算・リプレイ。こうなるともはや逆に拷問です。生きることの意味そのものがだんだん分からなくなっていく繰り返し地獄。しゃれにならないぐらい恐ろしい世界です。
その一方で、人生を何度もやり直せるとして、じゃあ自分は世界に対してどれだけの影響を与えうるでしょう?自分の可能性を最大限に世界に開いたとして、結局どれほどの存在になりうるでしょう?このことを真っ正面から見つめるのも、これまたしゃれにならないぐらい恐ろしいことです。
このなんとも不条理な世界に対して、なんとかして自らの存在の意義を探ろうとする主人公。そしてその繰り返しの中から見えてくる新しい人生哲学。
非常に深い作品です。抜群に面白いSF小説であると同時に、抜群に意味深い文学作品です。これだけ見事に構築された世界を持つ作品には久しぶりに出会いました。文句なしに5つ星。
繰り返し人生の後にたどり着く、作品の「オチ」にも注目。どんなラストになるかいろいろと想像しながら読んでみましょう。きっと最後までドキドキしっぱなしの素敵な読書体験になりますよ。
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そういえば昔「アウターゾーン」で、死ぬ直前に何度もリプレイされ永遠に死ぬ瞬間の苦しみを味わい続ける、という最高に悲惨な話があったなあ。あれは子供心ながらになかなかきつかった記憶が。
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