Ph.D.交流会 with dankogai

Ph.D問題をみんなで語り合おう、という交流会に行ってきました。ゲストはなんとあの dankogai

この交流会についてはもともと mixi 経由で知ったのですが、ポスドク1年目で今後のキャリアパスについて悩む時期、そのぴったりの時期に(一方的に・勝手に)敬愛する dankogai こと小飼弾さんとお会いできるということで、わくわくしながら参加させていただきました。

弾さんの印象等々は最後に書くとして、まずは今日の弾さんのお話のメモと、それについてのいろいろをまとめておきます。
※注意:以下のメモは自分なりに咀嚼した結果としてのメモであり、弾さんのお話の内容をそのまま追っているものではありません。あしからず。


☆キーワードは “自活” ☆
個人も大学も、このキーワードをもとに考えればスッキリ?


・”学” と “金” の関係

弾さんはご存じの通り中卒です。いわゆる “学” はありません。でも経済的には、博士号を取得している我々より圧倒的に成功されています。もちろん弾さんが中学校を卒業された後に、全く勉強をされていないということではありません。いやむしろ下手に大学なんかに行っている人よりもはるかにたくさんのことを学んでこられたことでしょう。(そして今でも日々学び続けておられるのは周知のことですよね)

さて、ではそもそも “学” とは何でしょうか?ここでは特に、大学という機関(Institution)での “学” とは何か、ということについて考えていきましょう。こうした “学” をもとに “金” を稼ぐのは、少なくとも今の日本では難しい状況です。”学”→”金” という流れは基本的にあまりありません。一方、”金”→”学” という流れは今も昔も変わりなく存在しています。もともと学問なんて金持ち(or 金持ちの太鼓持ち)が自由にやっていたもの。つまり特別な機関に所属することなく、勝手にやっていたものなのですから。ニュートンしかり、エジソンしかり、ダヴィンチしかり。そして弾さん曰く、今でも “金” がある人は、どこかの段階で “学” を求める傾向にあるとのことです。

つまり、”金”→”学” は自然と生じるものなので、我々が気にすべきは “学”→”金” の流れだと言えるでしょう。



・Institution の存在意義

では次に、なぜ現代ではわざわざ Instutition を作って “学” を行う必要があるのか、という点に注目してみましょう。

“学問先進国”(長い歴史を持っているということ)である西欧における、Institution の生まれ方・活かされ方については、例えば以下の3パターンが考えられます。

1. 必要系:物理実験のように機器に巨額の費用を投じて行われる研究は、お金的にも時間的にも個人でやれるレベルを超えているので、公的機関を通じて研究にお金を投入するシステムを作る。

2. 自活系:Harvard Univ. のように、大学そのものが資産運用を行うことで利益を上げ「お金持ち大学」となることで、自前で研究にお金を投入するシステムを作る。

3. パトロン系:Stanford Univ. のように、もともと金持ちが作った大学の場合、その財産(例えば土地など)をお金に変換することで、自前で研究にお金を投入するシステムを作る。

1.はやや特殊な部類に入りますが、2.と3.はどちらも “自活” という点から見れば同じようなものでしょうか。さてこうして見てみると、、、そもそも Institution そのものに “学”→”金” という流れは内在されていないことが分かりますね。我々はよく “学”→”金” の流れについて問題にしますが(そして上でもそのように問題を提起しましたが)、実はこれはピントがずれた問題設定だったのかもしれません。”学” を “金” に繋げようとするからおかしなことになるわけで、本来的な学問のあり方を思い出せ!という視点から考えるべきなのかもしれません。

我々が本当に議論すべきは、どうやって “学” を “金” に繋げるかではなく、どうやって “金” とは独立した “学” を手に入れるか、なんですね。


・大学の “自活”

“学”→”金” の流れを意識しないための理想型は、上の 2., 3. にあるような “自活” 型の大学でしょう。お金は Institution 側が何らかの形で手に入れる。研究者はそれをもとに好きな研究を行う。時流に乗った研究を速いサイクルで行えばさらにお金が入ってくるし、じっくり時間をかけて継続していく研究はそうした “儲かる” 研究に助けてもらいながら地道に行える。最終的に大学全体として利益をあげていければOK。

このシステムは、おそらく日本の大学(特に国立大学)において決定的に欠けているところだと思われます。むしろ逆に、お金に結びつけることは「よくないこと」であるかのような雰囲気すらあるぐらいです。この部分の意識を変えて、大学が “自活” していくシステムを作ることが、日本の大学においてまず何よりも求められることなのかもしれません。

さて、なんだかいわゆる「Ph.D.問題」(≒就職無い問題)とは関係の無い話をしているようですが、実はそんなことはありません。大学が研究機関として “自活” できるようになれば、その中の人である研究者はより柔軟に職を選ぶ・変えることができるようになるはずです。これは非常に重要なことで、社会からの要請や時代からの要請(つまり自分の研究がある時点において求められている確率≒運)によらずに、個人の興味や感性に合わせて研究を遂行していくことができることを意味しています。

つまり、大学が “自活” することで、Ph.D. の現状・将来に関する諸問題はいっぺんに解決されてしまうかもしれないのです。なんて素敵(本当か?笑)



・個人の “自活”

個人の問題に関しては、弾さんからはやや厳しめのメッセージが送られました。一言で言えば

「博士という最高の学位を手に入れるのだから、選択・決断は自己責任でちゃんとやれ」

ということです。身も蓋もない言い方ですが(笑)、確かにそうなのでしょう。だいたい「博士を取って将来食っていけるのか」を自分でリサーチして判断できないような人は、そもそも博士過程に進んじゃダメなのです。

以前一部で話題になった「博士が 100 人いる村」の中では、最終的に8人が 行方不明 or 死亡 しました。個人的にはこの8人をどう救うかが問題だったのですが、弾さん的には

「博士100人の周りには、学も金も職も無い奴が何万といるわけで、そっちを救う方が大事」
「博士まで進むような連中は、”8人”になるリスクがあることを分かった上で自己責任でがんばれ」

ということだそうです。まあ言われてみればその通りですね。このあたりはまた「若者と仕事」問題において、あらためて考えていきたいと思います。



ということで、なんだか取り留めのない感じになりましたが、こんな感じの交流会でした。まとめると、大学も博士も “自活” してがんばれ、ということ、そこに尽きます。なんだかマッチョ的な解になっている気もしますが、まあそんなものでしょうか。もちろん今日の交流会&メモは考えるきっかけとしてのものなので、自らの研究者としての生き方、および日本の Ph.D.問題については、今後も継続して考えていきたいと思います。



♪弾さんについて♪

最後にオマケ的に、弾さんの印象を。

まず、意外と普通の人でした。(←どんな感想だよ 笑)
あのブログのエントリ頻度からして、思いつくままにマシンガン的にしゃべりまくる人、というイメージがなんとなくあったのですが、全然そんなことはなく落ち着いて話されている姿が印象的でした。ただ弾さん本人としては、output が input に追いついていなくて困る、とのこと。それは input が多すぎるんですよ〜、と言いたいところですが、「input は output で律速されているから、本来なら input はもっと増やせるんだよ」なんて言われちゃあもう何も言えません (^^;

あと意外だったのは、弾さんが名刺を持っておられたこと。「弾です。以上。」みたいな人だと思っていました(笑)。ただもちろんそこは普通の名刺ではなく、ちょっと変わった名刺なんですけどね。
個人的には、名刺なんて馬鹿げた文化は早く無くなればいいのにと思っているのですが、なんだかんだ言って、やっぱり便利ですよね。まあ要は「肩書きの名刺」ではなく「個人の名刺」を持てばいいだけの話なんですが。僕もそろそろ名刺作ろうかなあ。変わったやつを。を?



最後になりましたが、今日の Ph.D.交流会を企画してくださった清末さま、金子さま、そして貴重なお時間を我々のために使っていただいた小飼弾さま、本当にありがとうございました。すごく楽しい夜になりました。また次回の交流会も楽しく実のあるものにしていきましょう。

次からはこのブログでも開催のお知らせ等を流したいと思いますので、興味のある方はどうぞ積極的にご参加くださいね♪

4 Comments

  1. >ヤコウさん

    お久しぶりです!
    この記事読みましたよ〜。
    そうですよね、谷古宇さんは専門ですもんね。
    また面白い記事があったら、こっそり教えてください (^^)

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