B. C. Martinson et al., Nature (2005)

B. C. Martinson, M. S. Anderson and R. de Vries, Scientists behaving badly, Nature 435, 737-738 (2005)

科学者の不正行為についての調査報告です。

アメリカの National Institutes of Health (NIH:国立衛生研究所) に所属する研究者を対象に、不正行為に関するアンケート調査が行われました。
この調査の結果、なんと回答者の3人に1人は「重大な不正行為」を行ったことがあるという驚くべき報告がなされています。

過去の調査(e.g. 2002年)ではわずか数%の不正行為率であったのに対し、今回の結果がそれを大きく上回ったのにはある理由があります。
これまでは2000年に US Office of Science and Technology Policy (OSTP:科学技術政策局) による不正行為の定義「fabrication, falsification, or plagiarism(捏造・偽造・盗用)」に則った調査しか行われてこなかったため、極端に悪質な不正行為しか見ていなかったのです。

一方今回の調査では、10大不正行為+その他の6つの不正行為が挙げられています。

10大不正行為:
 1. データの偽造や加工
 2. human-subject requirements の major な側面の無視
 3. 適切な引用の非公開
 4. 学生や研究テーマ、研究依頼者との不適切な関係
 5. 無許可あるいは著作権非表示での他人のアイデアの使用
 6. 機密情報の無許可での使用
 7. 自分の過去の研究と矛盾するデータの非表示
 8. human-subject requirements の minor な側面のやり過ごし
 9. 他人のデータの不備や不適切な説明の見過ごし
 10. 出資者の圧力による研究計画・方法・結果の変更

その他の不正行為:
 11. 複数の雑誌への同じデータや結果の提示
 12. 不適切な著者表示
 13. 研究方法・結果の詳細の非表示
 14. 不十分あるいは不適切な研究計画の使用
 15. 直感によるエラーデータ点の間引き
 16. 不十分な研究記録

human-subject requirements というのがよく分からなかったのです、研究よりも人間の健康や命を尊重する、という決まりごとのことでしょうか。

さて調査結果によると、捏造・偽造・盗用の割合は過去の調査と同程度(数%)であったのに対し、その他の不正行為に関しては5%〜10%という非常に高い割合を示しており、全体で33%の研究者が10大不正行為のうちの最低一つに抵触したということです。

また若手研究者と中堅研究者での結果比較も行っており、中堅研究者の方が有意に不正行為率が高い結果が出ています。
その解釈についてはいくつか述べられていますが、何とも言えないのでここでは割愛します。

今回の結果を受けて、研究者の不正行為はごく一部の特殊な例ではなく研究者集団全体が抱える一般的な問題である、と結論づけています。
そして、こうした不正行為の原因は現在の研究者の置かれている環境にあり、その環境を改善しなければ根本的な解決は見込めない、と主張しています。

今回の調査結果は、非常にショッキングな報告内容ではありましたが、研究者の環境改善へ向けての大きな誘い水となってくれると嬉しいです。

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