限りなく透明に近いブルー 村上龍(講談社文庫)

「太陽の季節」(石原慎太郎)が50年代の若者を描いた作品だったのに対し、こちらは70年代の若者をテーマにした作品。
どちらも、当時の世相や若者たちの風俗を体感できるという点ではひとつの共通項を持つ作品といえるでしょう。
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50年代の若者が「強靱な肉体と痴呆状態の顔」で若さのエネルギーを前面に押し出していたのに対し、ここで描かれる70年代の若者は「鋭敏な顔と廃人状態の肉体」で負のエネルギーを垂れ流し続けます。

クスリ、酒、暴力、クスリ、セックス、酒、クスリ、セックス、暴力、クスリ、、、

あまりにも激しい状況描写の連続に当時の文壇においては賛否両論が飛び交ったようですが、現代に至っても未だに読者に強烈な印象を与えうる凄まじい文章群です。
やはり作家としての力量を比較した場合、石原慎太郎とは雲泥の差があることを実感します。

しかし、文庫の解説でも少し触れられていますが、本書の最大の特徴はその内容の激しさにあるわけではありません。
というかむしろ、これだけ「行為」を描いているにもかかわらず、そこに関わる人間たちが全く浮かび上がってこないーーつまり意識的に小説世界における彼らのアイデンティティを消し去っているーーことこそ、本当に驚くべきことなのです。
そのため、目を覆いたくなるような行為の数々が描かれている最中も、ある種の静けさというか冷静な視線のようなものが常にどこかに感じられるのです。

こうした行為と行為者との隔絶、あるいは肉体と意識との遊離という状態は、酒やクスリによって得られる特殊な感覚ともマッチしており、それはそのまま70年代の若者が迷い込んだ不安定な世界観を表しているといえるでしょう。

もちろん現代を生きる若者である僕が、本書の真髄を正しく認識できているとは言い切れませんが・・・。

村上龍はこれまでほとんど読んだことのない(読まず嫌いしていた)作家さんなので、もう少し年代を追って何冊か著書を読んでからまた考えてみたいと思います。

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4 Comments

  1. トラックバックありがとうございます!!
    あたしなんかよりものすごわかりやすい表現で・・・(^_^;)
    すっごい納得しましたー!!!!
    ワタシは舞台が福生ってことで興味持ったんですけど
    村上氏のほかの作品も読んでみます☆

  2. >SHAORiiさま
    コメントありがとうございます。
    うちの読書日記では毎回いろんな方の記事をTBして、いろんな感想や考え方を紹介しています。
    みなさんそれぞれに全然違った感想を書かれていて、けっこう面白いです。
    村上龍の別の本も近いうちに読もうと思ってるので、よかったらまた遊びに来てください♪

  3. Sasakiさん、こんにちは。
    僕のブログを紹介して下さってありがとうございます。
    トラックバック、打たれてるの知らなくて、連絡が遅くりました。すみません。

    Sasakiさんがおっしゃっている、ブルーを支配している静けさと冷静な視線、とてもよく理解できます。僕もそう思います。そこがカッコいいですよね?

    ブルーの登場人物が熱い人達だったら、ちょっとカッコ悪くて好きになれなかったと思います。

    村上龍の本をまた読んで下さい。そしてまた僕のブログを紹介して下さい(笑)

  4. >Muteさま
    コメントありがとうございます。
    きっとあの醒めた感じが70年代若者特有の”カッコよさ”なんでしょうね。
    行為の激しさの中で、しんと静まりかえっている彼らの表情がとても印象的でした。

    普段は適当に最近の記事の中から選んでTBしているのですが、Muteさんのブログは村上龍の本に特化しているので、彼の本を読んだらぜひまたうちのブログで紹介させていただきたいと思います♪

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